――あなたは北朝鮮政策に関して、どのアプローチを支持するか。
私は、「体制転覆策」と言われているアプローチを支持する。
この言い回しは、北朝鮮を専門とするロシア出身の学者で、洞察力に秀でたアンドレイ・ランコフ氏が作りだしものだ。「体制転覆策」とは、体制による北朝鮮国民に対する統制を弱体化させていこうとする作戦を指す。具体的には、経済面での相互交流を限定する(大規模な援助を行わない)、情報を浸透させる、また別の方法での接触により北朝鮮の国民が外の世界で起こっていることをもっとよく理解できるようにする、などの方策が考えられる。学術交流も、この作戦の重要な一翼を担いうる。
ケソン工業団地は、この体制転覆策の好例だ。複数の韓国企業が小規模な工場を操業し、南北を隔てる非武装地帯から北にわずか10マイルほどの地点で、5万3000人を上回る北朝鮮人を雇っていた。ここで働く労働者は、帰郷した際に、家族や隣人たちを相手に、この本質的には韓国の工場で働いた経験を語る。北朝鮮政府は、ケソンの合同プロジェクトが生み出す経済的利益を享受してきたが、その一方で、ケソンの北朝鮮社会への波及効果について、不安を漏らすこともあった。
チョコパイに見る危険な兆候
一例として、あるとき北朝鮮は、韓国企業の工場の幹部が配下の労働者に「チョコパイ」(韓国で人気のスナック菓子)を配るのをやめるよう要求した。しかしやがて、チョコパイは北朝鮮全土で、闇市場に登場するようになった。北朝鮮がケソン工業団地の閉鎖を決めたのは、北朝鮮社会に与える影響が大きすぎると判断したからではないだろうか。
また、プライドを傷つけられたという側面もある。だからこそ、韓国に対し、「南はわれわれに影響を与えたと考えているのだろうが、われわれは南を必要としているわけではない。われわれはその気になれば、自らが傷つくことも承知で何でもできるのだ」などと強がってみたりするのだろう。
私は、これは核実験・ミサイル実験や戦争の脅しよりも、ずっと危険な兆候だと思う。このような態度からは、指導部が持続的な緊張緩和につながる可能性のある考え方をしていないことが読み取れるからだ。
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