※ インタビュー(上):北朝鮮を突き動かす、国内の“脆弱性”
北朝鮮の指導部はほぼ安定している
――実際のところ、金正恩はどれぐらい権力を握っているのか?
北朝鮮はいまだに、統治の正統性をめぐる争いのさなかにある。金正恩氏が指導者の地位に就いた今、これは特に重大な意味を持つ。年若く、真価がまだ実証されていない正恩氏は、自らの体制の安定に疑問を感じているに違いない。
私は、正恩氏個人が北朝鮮政府としての意思決定を行っているとは思わない。意思決定は集団指導に委ねられているはずだ。私もほかの人たちと同様に、正恩氏の叔父に当たる人物が一定の役割を果たしていると推測しているし、若年の正恩氏をはるかに超えた意思決定がなされている証拠もある。
しかし私たちの誰ひとりとして、北朝鮮指導部の議論の内情に通じているわけではない。北朝鮮の文化・社会を基に考えれば、真価がまだ実証されていないほぼ未経験の29歳が、自ら大きな采配を振るっている可能性は低い。
正恩氏とは対照的に、父親の金正日氏の場合は20年以上もの準備期間があり、数々の上級職を経験したうえで、金日成氏の死亡を受けて最高指導者の地位を承継した。
若い正恩氏がしきりに戦争の危険を冒そうとしているという解釈は、私がみるところ、北朝鮮政府の状況を正確に描き出したものではない。北朝鮮の指導部は、ほぼ安定している。体制を率いているのは、金一族の指揮下で長年にわたり国家を運営してきた指導者集団だ。彼らは気まぐれでも衝動的でもない。時には危険を冒すこともあり、攻撃的・挑発的な行動を取ることもよくあるが、自滅的な人たちではない。
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