「ノート7」の発火事故は対岸の火事ではない リチウムイオン電池の宿命=燃えやすい

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前述したようにリチウムイオン電池とは、もともと燃えやすいパーツだ。メーカー側に瑕疵(かし)がない場合でも、使い方や環境によっては発火の可能性はある。たとえば、航空機内で電子機器を置いたままシートに座ってしまい、本体が壊れることでバッテリーにも変形負荷がかかり、それが原因で内部で回路がショートするなどして異常過熱し、有機溶剤が外に漏れ出して燃える……といった事故もありえる。

ノート7の発火事件以降の9月24日には、米デトロイトを出発し、蘭スキポール空港を目指していたデルタ航空機内でサムスン電子製のタブレットが発火した。大事故には至らなかったものの、緊急着陸する結果となった。原因は直前の運行便で置き忘れられたタブレットが、シートに押しつぶされて破壊されたことが理由ではないかと推察され、ノート7のケースとはまったく別要因。どんな製品でも発火につながりえるシチュエーションだ。しかし、ノート7の事件後、敏感となった消費者にとって“何が原因の発火なのか”は関係ない。

ギャラクシー S7、S7 edgeをはじめ、他のギャラクシーシリーズには、ノート7のような問題はないと考えられているが、個々の原因が特定できない事例で発火や発熱騒ぎは起きている。従来ならば、あまり問題にならなかったであろうケースでも、ギャラクシーだからという理由ですべてメーカー側に瑕疵があるという空気感が醸成されてきている。

過去を遡ると、2006年に起きたソニー製バッテリーセルの発熱・発火問題が発生。さらに遡れば、アップルがPowerBookシリーズで発火問題を起こしたこともある。もちろん、個々の原因や責任に関しては調査を行うべきだが、消費者側もリチウムイオン電池の性質について知っておくべきなのかもしれない。

前述したようにリチウムイオン電池は、その性質上、充電制御を行う回路とともに設計、調整されている。バッテリーパックの場合は、パック単位での回路制御、内蔵固定の場合は本体内にその制御を行うパートが搭載され、状況に応じて最適な充電制御が行われる。

ほとんどの携帯型電子機器に搭載

しかし、一般消費者に対して、そのような合意をメーカー自身が求めることは現実的ではない。多数の発火事件、対策をほどこした製品への交換後も変わらず発火、そして製品の発売中止という事実しか消費者の脳裏には残らないだろう。

今後も、これまでならば大きな話題になっていなかった個別の発火事故が、ニュースに頻繁に取り上げられるようになるかもしれない。来春に発売される予定のギャラクシーS8をはじめ、サムスン電子製品全体への影響も懸念されるところだが、ライバルにとっても決して対岸の火事とは言えない面もある。リチウムイオン電池は現在、ほとんどの携帯型電子機器に内蔵されているからだ。

その意味でも、今回の発火事件の経緯をうやむやにしてはならない。発火の原因を特定し、可能な対応策を明らかにしていくことは、業界全体の発展のために必要なことと言えるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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