──代表取締役社長として担当業務を粛々とこなしている、などは形容矛盾ですね。
経営者は単純に担当者の延長上に出てくるものではない。経営そのものになると、スキルだけではどうにもならないことがある。担当の延長上にはないセンスが必要になる。基本的な認識として経営もスキルで片付くと思うと、代表取締役担当者のようなありえない存在になってしまう。これでは「経営の墓場」だ。その会社は誰も経営していないのと同じ状態になっている。
──グローバル化せざるをえないと発言する社長もいますね。
経営は自由意思の原則の下にあって、誰もこうしろと頼んではいないし、誰かに強要されてもいないはずだ。そうでないと、センスもへったくれもなくなってしまう。もともと自由意思は商売の大原則だし、センスをつけるのにいちばん大切なことだ。自由意思ということは好きでやりたくてやるわけで、だから良しあしよりも好き嫌いが決め手になってくる。
──グローバル化では人材不足がいわれます。
グローバル人材がいないからグローバル化が進まないと強弁する人もいる。その際のグローバル人材とは何か。英語が話せてクロスカルチュラルな多様性に対処できるコミュニケーション能力がある人ということか。本当にそういうスキルをそろえた人材がいればグローバル化できるかといえば、そんなことはないのは多くの人がわかっている。
グローバル化の本質はもちろん経営。つまり、非連続性を経営することだ。これまで慣れ親しんだ日本という環境を出て、商売をほぼゼロから組み立てていくのがグローバル化だ。卑近な例を取れば、四国のうどん店が東京に進出するのも、非連続性を乗り越えるという意味ではグローバル化のようなものだ。そのときに必要なのは、「ちょっと俺、東京に行って商売を作ってくる」、こういう人ではないのか。これがまさに経営人材。グローバル人材だけが特別ではない。そういう当たり前のことが見過ごされている。
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