セブンがそごう・西武3店をH2Oに売るワケ 鈴木敏文元会長の"遺産"をようやく清算

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小売業において、5年・10年の長期に起こる需要の構造変化を、前もって正確に予測することは困難である。セブンは毎日の販売データを見ながら、商品戦略を毎日少しずつ見直していくことで、結果的に5年・10年の大きな構造変化にも的確に対応している。

セブン-イレブンは、国内で圧倒的な強さを示す。ローソン、ファミリーマートがセブンを追うが、平均日販で大きく離されている状況は変わらない。

「米国の建て直し」に成功したセブン

例えばローソンの「失敗」の一つは、次々と新業態を作ったことにある。プレミアム・ブランドを提供する業態として「ナチュラル・ローソン」を立ち上げた。ところが、それが従来のローソンと競合するため、十分な店舗展開ができなかった。そして、ナチュラル・ローソンの存在が、従来のローソンのプレミアム・ブランド化の障害にもなった。ここで、セブン-イレブンという業態一本に絞り、セブン・プレミアムを育てたセブンに遅れを取ることになった。

またファミリーマート(9月にユニーグループHDと統合、ユニー・ファミリーマートHDに)も健闘しているが、次々と競合コンビニを買収・経営統合して成長してきたため、ブランド統合に手間取ることになった。

セブン-イレブンの強みは、海外でも通用するビジネスモデルを作ったことだ。特に、収益低迷が続いていたセブンの米国コンビニ事業は、日本型のビジネスモデルを採り入れることで、高収益事業に転換した。今後アジアでも、セブンというビジネスモデルの一段の拡大を図っていくことになるだろう。

一方、ライバルはどうか。ローソンは、中国を中心に海外展開を図るものの、全般的に遅れている。また、ファミリーマートは、台湾や韓国・タイなどに積極的に出店してきたが、現地の大手小売業と合弁で展開することを基本としてきたため、ファミリーマートというビジネスモデルの輸出とはならず、現地企業との折衷モデルとなっている。そのため、セブンのような強さを実現できていない。ファミリーマートは、韓国では、合弁相手との経営方針をめぐる対立から、事実上撤退の憂き目にあっている。

窪田 真之 楽天証券経済研究所長兼チーフ・ストラテジスト

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くぼた まさゆき

くぼた・まさゆき 1984年慶応義塾大学経済学部卒業。大和住銀投信投資顧問などで日本株ファンドマネージャー歴25年。2012年2月より現職。企業会計基準委員会の専門委員・内閣府「女性が輝く先進企業表彰」選考委員など歴任。著書に「投資脳を鍛える!株の実戦トレーニング」(日本経済新聞出版社)、「クイズ 会計がわかる70題」(中央経済社)など多数。

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