大人気ホンダの軽、"2色塗り"の仕掛け人

ディズニーのアルバイトから、ヒットメーカーへ

工場側が上げてきた課題は大きく2つ。ひとつは、工場にツートンカラーを塗装する工程を組み込むことが困難なこと。もうひとつはツートンカラー用の塗料の開発だ。

工場はそもそも単色用に作られているため、もう1色塗るには新たに工程を足さねばならない。だが、それをどこに組み込むかが難しい。

齋藤ら開発メンバーは、実際に鈴鹿製作所に何度も出向き、工場現場の担当者と議論を重ねた。ヘルメットをかぶって生産ラインも見学した。そのうえで、ライン塗装や手作業による塗装、また新たな工程を置く場所など、さまざまな可能性を工場に提案したという。開発者、とりわけカラーデザインのような1担当者が、実際の量産工程にかかわることは通常なく、異例の取り組みだ。

デザイナー自ら、塗装のテストを繰り返す

最終的には、ベースとなる色の塗装を終えた後、いったんラインから車体を降ろし、マスキングをしたうえで、手塗りをすることになった。自動工程を作れば塗装のスピードは上がるが、もし売れなかったら設備投資がムダになる。工場としては、さすがにそこまでリスクは取れない。

塗料開発では、「塗料は自分の直接の領分なので、自ら提案やテストを繰り返した」(齋藤)。通常の塗料開発であれば、カラーデザイナーが色を提案すればそれに沿った形で、塗料が開発され、量産に回る。

だが、ツートンカラーの場合は、ベースカラーの上に2色目を塗るため、色や塗料の組み合わせによっては、ベースの色が透けてしまい、想定どおりの色にならない。齋藤にはちゃんと塗装できることを証明する必要があった。

齋藤は、塗料・色の組み合わせや、塗装の厚さなど、自らテストを何度も繰り返し、ツートンカラー実現に向け、検証を行った。「A4サイズの車体と同じ鋼板に色を塗って、実際の組み合わせを作り、これなら大丈夫と、工場を説得した」と齋藤は語る。

結局、工場を説得するまでには1年以上の時間がかかり、量産工程の完成まで含めると約2年もの取り組みになった。

次ページついに、工場が動いた
キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 近代日本を創造したリアリスト 大久保利通の正体
  • ほしいのは「つかれない家族」
  • 赤木智弘のゲーム一刀両断
  • 野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」
トレンドライブラリーAD
人気の動画
築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの大問題
築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの大問題
「料理が突然、上手になる」たった1つの簡単秘訣
「料理が突然、上手になる」たった1つの簡単秘訣
山手線2日間運休「渋谷駅大工事」何をどう変えた
山手線2日間運休「渋谷駅大工事」何をどう変えた
AOKI、コロナ禍で売れた「パジャマスーツ」で描く復活戦略の要諦
AOKI、コロナ禍で売れた「パジャマスーツ」で描く復活戦略の要諦
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
持たざる国・日本に大激震<br>エネルギー危機が来る

脱炭素の移行期に化石燃料の争奪戦が勃発。天然ガスの価格は歴史的な急騰を記録しました。余波はサプライチェーンの混乱から世界経済の後退懸念、原発待望論まで広がります。資源小国の日本が生き残る道はあるのでしょうか。

東洋経済education×ICT