が、リーマンショック以降、国内市場では軽自動車やハイブリッド車(HV)への需要シフトがとりわけ顕著になってきた。そうした市場構造の変化に対応するため、ホンダも再び軽自動車に本腰を入れることを決断、その先陣として投入したのがNシリーズなのだ。
「できない理由」を探りに、製造現場へ
ツートンカラーの発端は、デザイン室で行われたデザインコンペだ。ホンダのデザイン部門では、アイデア出しの場として定期的にコンペを実施。あえて量産までは想定せず、自由な発想でデザインを考える機会と位置づけている。
齋藤は「屋根に荷物を積んで、自由に旅行に出掛けたくなるようなデザインの軽自動車があったらいいなと考えた」と、ツートンカラーを考案したきっかけを語る。
ツートンカラーそのものは昔からあるオーソドックスなデザイン手法。2色に塗り分けることでノスタルジックな雰囲気やワクワク感を表現できる。
もっともNBOXは、ファミリーを中心とした幅広い顧客層を狙った「主流」の自動車として企画されていたため、当初はツートンカラーは想定しなかった。齋藤は、NBOXより荷室が広く採られ、趣味性も強いNBOX+と、こだわり感を持つクルマとして開発されるN-ONEには、ツートンカラーがよく似合うと考えた。
「色というのは気持ちの部分。一目ぼれしてもらえるような色をつくらないといけない。その色で喜ぶ人がいる、と思いながら色を考えている」と齋藤。ショッピングセンターで何気なく人が手に取る商品や、街や自然の風景、情景の中に色のヒントを見つけるという。
コンペをきっかけに、齋藤が発想したツートンカラーは、周囲のデザイン開発担当者の間では好評だった。だが、コンペでならともかく、量産車に適応し、実現させるとなると話は別だ。
特に問題になるのが製造現場だ。工場には、そもそもツートンカラーを生産する工程はないため、さまざまな負荷がかかる。
ツートンカラーの提案に対して、生産を担当する鈴鹿製作所(三重県)は当初、難色を示した。工場側にしてみれば、採算を含め生産に責任を負っているだけに、簡単に首を縦に振れないのは当然だ。
どうしたら工場を説得できるか――。齋藤が取り組んだのは、工場の言い分をとにかく聞くことだ。Nシリーズの車両開発を統括する浅木泰昭ラージプロジェクトリーダー(LPL、本田技術研究所四輪R&Dセンター主任研究員)ら開発のほかのメンバーの協力も得て、工場にツートンを実現できない理由を教えてもらった。
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