0.4%台へ再低下か上昇か、方向探る長期金利 市場動向を読む(債券・金利)

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4月、特に前半の長期金利(新発10年利付国債の流通利回り)は記録的な乱高下を演じた。4日に0.50%台半ばから一気に0.425%まで急降下し、2003年6月11日に記録した過去最低の0.430%をあっさり更新。翌5日午前には0.315%へと一段と下振れして、スイスの長期金利が昨年12月10日に記録していた世界史上の最低値である0.36%をも塗り替えた。

ところが、同日の午後には一転して急反騰となり、一時0.620%と急低下前の水準を上抜け。その後も月央にかけて0.60%前後で上振れと下振れを繰り返したのだった。

10年国債金利が世界史上最低値をつけた理由

ことの発端は、黒田日銀が4日の政策委員会・金融政策決定会合で公言どおりに「量的・質的緩和」と称する次元の異なる大胆な金融緩和を決めたことだった。債券市場は、マネタリーベース(銀行券と日銀当座預金の合計)残高を2倍の270兆円に積み上げるための長期国債の大量購入という決定に度肝を抜かれた。

おもな具体策は、毎月の国債買い入れ額の倍増(従前の4兆円弱から約7.5兆円へ)や、対象国債の平均残存年数の2倍以上への長期化(3年弱から7年程度へ)など。毎月の購入額を巡っては、『ひとまず5兆円程度に増額か』との見方が多かっただけに、衝撃が増幅された格好。

毎月の国債発行額10兆円強のうち7割以上も日銀が吸い上げるとなれば、民間投資家の国債投資は著しく制約される。そのような“国債を買いたくても買えない超・需給相場”への警戒感が一気に高まったのだった。

年度初めに含み益を実現益に変える目的の「期初の益出し売り」を実施し、相場の押し目で再投資を企図していた投資家や、大幅な金利下振れを当て込んだ債券ディーラーなどが買い焦り感に駆られ、歴史的な相場の高値にもかかわらず、思わず飛び付いてしまったのだろう。

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