人材育成も大きな課題です。テツさんは1年以上にわたって手塩にかけて育ててきた日本人アシスタントの男の子が、家庭の事情で急に帰国することになってしまい、途方に暮れました。こんな時は「もっといい人材を雇える機会が訪れた」と思って次の一手を打つしかありません。
もう一人、中国人のスタイリストも在籍していますが、お客様は基本的にテツさんについていますから、一人で頑張って顧客を増やしていくしかありません。自分が倒れたらそこでゲームオーバーです。プレッシャーも大きいでしょうが、今はテツさんの独り舞台だからこそうまくいっているとも言えます。
次の夢は2店目の出店ですが、別の人に店を任せた瞬間に「mano a mano」が目指す世界観に別の個性が入り込んで来ることになります。技術、接客、店の雰囲気や個性などを1号店と同じ水準に保ちつつ、事業の発展とブランド力の向上を実現するのは容易ではありません。
小さいからこそできるブランド作り
顧客から支持され、社会に受容される強いブランドを作るには、まず自分のブランドを以下の問いかけに沿って明確に定義することが大事です。
① 自分は何者か。どのような信念や能力をもっているのか。
② なぜこの活動をやりたいのか。この活動の存在意義は何なのか。
③ 何をやりたいのか。どのような価値を提供するのか。
④ どのような個性を持ち、どのように振る舞うのか。
⑤ どのように語るのか。
これらの答えの中から「自分らしさのエッセンス」を見つけ出すと、ブランドが主張する価値観や達成したいビジョンが定義できます。
言うまでもなく、個人経営の事業など自分でやっている活動においては、自分自身の好みや夢を明確化すれば済む問題ですから簡単です。しかし、組織が大きくなって多くの人たちと分業制で運営するようになると、ブランドの同一性を維持するのが難しくなります。
昔から老舗のお店が「のれん分け」に慎重なのはそのためです。本店での厳しい修行に耐えてのれんにふさわしい技術と人格を備えて、初めて独立が認められるのです。ビジネスが好調なときに安直に多店舗展開すると、いちばん大事な「そのお店の本質価値」が損なわれてしまう可能性が大きいのです。
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