ギャップ、ザラに続き…世界最大アパレル、ヘネス・アンド・モーリッツ(H&M)が日本に上陸!
なぜ高い収益力を実現できるのか。H&Mでは、店頭に並ぶ1年前から商品企画を行っている。早期の工場発注で生産コストを抑える手法はユニクロと同じだが、すべての商品を仕込むわけではない。定番品や子供服などは早期発注をかけるが、流行に左右されやすいファッション性の高い商品は、数週間の短納期で生産する。両者の絶妙なバランスで、低価格と最先端のトレンドを両立させたことが、強みとなっている。
衣料低迷の日本市場 H&Mの勝算は?
「日本市場は流行に敏感な層が厚いので、支持されるに違いない」とエドマン氏。だが日本の消費者は、低価格のトレンドファッションといえども、品質面を重視する厳しい目を持つ。このため東京出店に際しては、品質管理担当を現地採用した。これは他国ではあまり例を見ないことだという。店舗スタッフも、他国の店舗で8カ月もの研修を受けており、これも特別に長い。
準備万端、あとはオープンを迎えるのみだが、待ち受ける環境は明るくない。日本では昨秋以降、かつてない衣料品不況に見舞われており、アパレル業界は、こぞって苦戦を強いられている。
この2~3年、日本では婦人服を中心に、街の流行をデザインに反映し、数週間の短納期で店頭に並べるビジネスモデルが隆盛を誇る。だが、この手法が浸透したことで、今やどこでも同じような洋服が店頭に並ぶありさまだ。大手アパレルでも、業績悪化によって提案型の小規模ブランドが次々と廃止へ追い込まれている。あるアパレル幹部は「最近、アパレル側にファッション提案の機能がなくなった」と嘆く。トレンド不在と言われる日本のファッション市場に、ハイファッションを得意とするH&Mが新風を吹き込む可能性は大いに考えられる。
目下のところ、唯一、日本で好調なのはユニクロだ。だが、最近のヒット商品は、保温性に優れた1000円以下の「ヒートテックインナー」や、脚を美しく見せる3990円の「スティックパンツ」。機能性という付加価値のついたベーシック商品が支持されている。ガソリンや食品の値上げで生活費が上昇し、財布のひもが締まりつつある日本人に洋服を買わせるには、低価格プラスアルファの付加価値が不可欠。H&Mが誇る“ファッション性”で、どれだけの日本人を引きつけることができるのか。グローバルプレーヤーの実力が試される。
(堀越千代 撮影:クリストファー・グラント、山内信也 =週刊東洋経済)
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