日産GT-Rが全面改良をまったく急がない理由 登場9年の大胆チェンジで何がどう変わったか

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その乗り味は激変レベルで、サスペンションは突っ張った感じがなくなり、バネ下はしなやかな動き、バネ上はフラットな感覚が強まった。ステアフィールも心地良いダルさがプラスされているうえにタイヤの状況もわかりやすくなっているので、路面変化にも柔軟に対応できる懐の深さも手に入れた。そして、タイヤの接地性が高まったことで路面を選ばず直進安定性も大きくアップ。もはや「R35 GT-R=ワンダリングマシン」は過去の話だ。

さらにラミネート入りガラスの採用や吸音材/遮音構造の見直し、新設計のエキゾーストやアクティブサウンドコントロールの採用により、不快な音はカット/いい音は聞かせることで、快適性向上と相まってストレスフリーなドライビング環境に仕上がっている。

そういう意味では、2017モデルはR35 GT-Rが登場以降アピールしてきた「マルチパフォーマンス」を最も体現したモデルと言ってもいいのかもしれない。ただ、ひとつだけ気になるのは、未だに安全運転支援システムの設定がない点である。「技術の日産」のフラッグシップであるからこそ、チャレンジして欲しい部分でもある。

「GT-R NISMO」は“速さ”を追求

そんなGT-Rに対して、日産のモータースポーツ子会社ニスモがチューニングした改造モデル「GT-R NISMO」は従来モデル同様にクローズドコースでの“速さ”を追求。パワートレインは600馬力/652Nmと変更ないが、2017モデルのアップデートされた車体をベースに構造用接着剤で剛性を高める「ボンディングボディ」を採用。この強靭な車体に合わせてサスペンションはかつてない硬いセットアップとなっている。ちなみにホイールは従来モデルと似ているが、4本で2.9kg軽量化されている。

ちなみに見た目やパワートレインはノーマルでNISMOのボンディングボディと専用サスペンション、専用タイヤ&ホイールの「トラックエディション engineered by nismo」も継続設定される。

こちらはサーキット(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)で試乗したが、従来モデルよりもしなやかに動くサスペンションと確実にわかるエアロダイナミクス性能の効果により、コース幅が狭いうえにハーフウエットの路面ながら600馬力を躊躇なく踏みこめる懐の深さとコントロール性の高さを実感。街乗りはかなり覚悟が必要のようだが、従来モデルから推測すると結構イケるような気がしている。そして、再びニュルブルクリンク・ノルドシュライフェでタイムアタックを実施すれば、自身の記録を間違いなく上回るに違いない。

ひとつだけ要望があるとすれば、GT-R NISMOにはかつてのスペックVなどに設定されていたカーボン・セラミック・ブレーキをOP設定してもいいと思う。

次ページGT-RとGT-R NISMOにスペックや走りの差はあるが…
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