企業は好況でも、中堅、中小企業は依然として厳しい
このように業種ごとの傾向を踏まえたうえで、注意しなければならない点があります。大企業、中堅企業、中小企業の数字を比較しますと、規模が小さいほどマイナス幅が大きくなっているのです。
さらに、大企業の傾向は、ニュースなどで報道されているとおり改善していく傾向となっていますが、中堅企業と中小企業は、前回調査より悪化している様子が読み取れます。「先行き」は若干改善していますが、それでもマイナス幅が大きい状況には変わりありません。
つまり、大企業に限って言えば、業種によるばらつきはあるものの業績がよくなっていく様子がうかがえるのですが、中堅企業、中小企業には好況感が浸透していないのです。この点をきちんと認識しなければなりません。
日本の企業数の99%は中小企業で、働いている人の7割以上は中小企業に勤めていると言われています。ということは、国内で働いている人の多くが、景気回復の恩恵にあずかっていないということです。今後、中小規模の企業を含め、本当に景気がよくなってきたかをきちんと見極めることが肝要です。
需要不足により、最終消費材の価格が上がりにくい
次に、1の業況判断の下にある、2の「需給・在庫・価格判断」を見ていきます。「国内での製商品・サービス需給判断」の数字は、すべてが大幅なマイナスとなっています。これは、「需要超過」から「供給超過」を引いたものですから、マイナスであれば供給過剰であるということです。さらにマイナス幅が大きいことから、どの業種も深刻な供給過剰であることがわかります。
併せて「製商品在庫水準判断」を見ますと、こちらもすべての業種において、大幅なプラスになっています。つまり、在庫過剰であるということです。
もうひとつ、「販売価格判断」にも注目します。こちらの数字も軒並みマイナスとなっていますね。前回調査よりマイナス幅は小さくなっていますが、デフレである状況が読み取れます。
しかし、一方で「仕入価格判断」は全業種においてハネ上がっているのです。政権交代の機運が高まった11月半ばから急速に円安が進み、輸入物価が上昇していることが大きな原因です。特に、素材に近い業種はその影響を直接受けてしまいますから、プラス幅が大きくなっています。
こうした状況下で、デフレ脱却は実現できるのでしょうか。価格判断からは、仕入れ価格の上昇に伴い、販売価格を上げる企業が増えていることが読み取れますが、まだ全業種でマイナスとなっています。つまり、仕入れ価格が上昇しても、供給過剰であることから、最終製品の価格にほとんど転嫁できていないのです。
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