自動車業界は、国内景気の先行きを慎重視
まず、業種別の業況判断(大企業)に注目してください。このデータを見て、私が非常に意外だと感じたのが、業績アップが期待されている「自動車」の業況です。前回調査(2012年12月)ではマイナス9、今回調査(2013年3月)の「最近」の数字は10と改善していますが、3カ月後の見通しを示す「先行き」はマイナス2となっています。自動車業界は、先行きを「悪くなる」と見ているのです。
ここで注意したいのは、この指標は国内での業況を示す数字だということです。つまり、日本での売上げは伸びないだろうと予測しているわけです。自動車業界は、国内景気の先行きをシビアに見ているのですね。
一方、自動車などの機械部品を作る「生産用機械」は、3月調査の「最近」がマイナス21、「先行き」がプラス3と大きく改善しており、見通しは明るいと考えているようです。自動車業界とは逆になっていますね。これは、すでに受注しているからではないかと考えられます。
前回から大きく悪化し続けている業種は、「造船・重機等」です。前回調査も今回の「最近」もマイナス25、「先行き」はさらに悪化してマイナス28となっています。
造船業の業績は、景気の波より少し遅れて反応します。船は景気がいいときに受注し、完成するまで時間がかかりますから、しばらく受注を持っているのです。しかし、その受注が切れる頃には好景気の波が終わっていますから、かなり後になってから業績が一気に悪化します。そういった点から、造船業は今後もしばらく低迷し続けると考えているようです。
「電気・ガス」も落ち込みが続いています。前回調査はマイナス5、今回調査の「最近」はマイナス8、「先行き」もマイナス8と悪化傾向が続く見通しです。円安の進行によって液化天然ガス(LNG)の輸入額が増えることを見込んでいるのでしょう。
改善すると見込んでいる業種もあります。例えば「建設」です。前回調査は0、今回調査の「最近」は5、「先行き」は8と上昇しています。これは、アベノミクスの2本目の矢である財政政策によって、公共工事が増えてきているからだと考えられます。
絶対値が大きいのは「通信業」です。今回調査の「最近」が40ということは、70%の企業が「良い」、30%が「悪い」と答えたということです。以前、このコラムで携帯電話3社の財務分析を行い、非常に好調であるとお話ししましたが、その状況は短観からも読み取ることができます。
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