受験前の「部活引退」がどうにも早すぎる 日本スポーツ界の巨大な損失?

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筆者が今回主張したいのは「勉強」の“成果”だけではない。部活動の引退には、もうひとつ大きな問題が絡んでいる。それは中高3年生の後半、約半年間は日本のスポーツ界に潜む「魔の期間」だからだ。

たとえば中学3年生の7月に部活動を終えて、高校でも同じ運動部に入るとする。3年生の7月まで続けても、高校での部活動は実質2年4か月しかない。しかも、中学3年時後半のブランクを考えると、体力や感覚を取り戻すのに、数カ月を要すことになる。成長著しい高校3年間でアスリートとして進化できる期間は、2年ほどしかない。スポーツ推薦で進む人もいるが、一般受験で進学を目指すアスリートも少なくない。これによって生まれるブランクは、日本スポーツ界にとって、明らかな“損失”だ。

筆者は地元の駅伝大会に出場するために中学3年の1月中旬まで部活を続けてきた。しかし、その後の2~3月、高校に入学するまでの期間は、世間一般で言われるように受験に専念しようとしたため、学校の「体育」ぐらいしか運動はしなかった。受験勉強のための夜食をいただきながら、たいして勉強もしなかった(机には向かっていたが)。その結果どうなったかというと、志望校の受験に失敗。体重は増加して、高校でも続けることになった陸上部でも、1年生の冬まで中学時代のパフォーマンスを発揮することができなかった。受験の失敗や体重増加などは自業自得とも言えるが、十分な知識のない中学生レベルでは、こうなってしまうことも少なくないのではないだろうか。

学校側は部活動を続けられる環境も用意するべき

近年はクラブチームも増えているものの、日本のスポーツ界は「部活動」を中心に発展を遂げてきた。そういう背景を考えると、学校側は本気で希望する3年生には部活動を続けられる環境も用意するべきではないだろうか。

運動部の場合、強いチーム(選手)は8~10月の全国大会まで競技を続けられるが、大半は5~7月の都道府県大会で終了してしまうことになる。目指すべき大会がないから「引退」するというのは非常にもったいない。中学や高校というカテゴリーで3年生が出場できる大会はないのかもしれないが、次のステージで競技を続けたいと思っている生徒なら、そのための準備は必要になるからだ。

学校の部活動としては、夏以降1・2年生を中心したチームづくりにシフトしていくが、3年生も、希望者のみ引き続き、部活動を続けられるようにすべきだろう。

特に野球やサッカーなどチームスポーツの場合、ひとりでのトレーニングには限界がある。後輩たちの邪魔にならないように、週1~2回でもいい。まったくそのスポーツをやらない期間をなくすだけでも、スキルや体力のダウンは抑えられるし、さらに受験勉強のための気分転換にもなる。下級生も、「スポーツ」や「受験」について、3年生から学ぶことはたくさんあるはずだ。

また親の「勉強しなさい!」という言葉が、子供の学習意欲をそぎ落としているという話をよく聞く。これからは、「たまにはスポーツしたら!?」という声を受験生にかけるのはどうだろうか。何事も強制ではなく、自主的に「行う」ことがスキルアップにつながるからだ。勉強をするのか。スポーツをするのか。それは子供たちが自分で考えて、取り組めばいい。

特に煩わしいこともなく、スポーツを極めたい生徒が“利”を得る部活動のシステム。多くの学校にはぜひ考えて取り入れていただきたいと思う。

酒井 政人 スポーツライター

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さかい まさと / Masato Sakai

東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在はスポーツライターとして陸上競技・ランニングを中心に執筆中。有限責任事業組合ゴールデンシューズの代表、ランニングクラブ〈Love Run Girls〉のGMも務めている。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』 (oneテーマ21) がある。

 

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