受験前の「部活引退」がどうにも早すぎる 日本スポーツ界の巨大な損失?

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ベネッセ教育総合研究所が、高校1・2年生に「部活動への参加状況と平日の家庭学習時間」を調査したところ、非常に興味深い結果がでた。「部活動に参加している」生徒は、「部活動に参加していたがやめた」生徒や、「部活動に参加していない」生徒と比べて、平日に家庭学習を「ほとんどしない」という比率が最も低いことがわかったのだ。

出展:ベネッセ教育総合研究所「第2回 子ども生活実態基本調査」(2009)

放課後(授業後)の“時間”は皆同じはずだが、何に時間を使うかで、その後の人生は変わってくる。でも、このデータを見る限り、部活動をやっていない生徒が、勉強を多く時間を割いているわけではない。部活以外に特別な活動をしている人は別だが、部活をする中高生は勉強しない、できない、というのは事実ではないといことになる。

勉強の「中身」も、部活をしている人としていない人では違うと筆者は感じている。冒頭で書いたように、原稿の執筆も時間があればクオリティの高いものが書けるということはない。

時間に余裕があると、「何をしていたのかわからない」という無駄な時間が増えてしまいがち。反対に自宅での学習時間が限られていると、スパッと勉強モードに切り替えることができ、集中力も自然と高まる。要は「効率」が非常に良くなるのだ。また時間がないことで、計画的に勉強を進めるという「自己管理能力」も養われる。単に「勉強時間を確保できるから」という理由で、部活をやめるのはちょっと違うかもしれない。

3年生もできるだけ部活を続けるべき

多くの中高生は3年生になると「自宅学習」が「受験勉強」に“グレードアップ”することになる。1・2年生のときよりも、勉強時間を増やさないといけない。そして、運動部の場合は、3年時の夏の大会(高校生の場合はインターハイ)などを機に「引退」することが多い。その後は、「受験勉強」に専念する人が大半だ。

なかには放課後のすべてを勉強に注ぎ、偏差値を急上昇させて、難関大学の受験を突破する人もいる。しかし、受験勉強に時間を費やすことができたとしても、全員が伸びるわけではない。「部活動をやめた」ところで、受験勉強がはかどるとは限らないからだ。

サラリーマンの場合は少し違うかもしれないが、成果報酬型のフリーランスは「できるまでやる」というのが仕事術になる。どれだけ時間を費やしたのかは、評価の対象にならない。受験勉強も同じだ。机に向かう時間ではなく、いかに試験で高得点をとることができるのか。それが大切になる。大事なのは結果であって、「受験勉強に専念」すればいいというものではないのではないか。

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