山本監督の「行けたら行け」はなぜ問題か?

バス会社における「行けたら行け」を考える

「行けたら行け」が生きる条件

さて、そんな「行けたら行け」ですが、その一方でしゃくし定規に上から目線で批判するのも少し違う気もします。

新人ならまだしも、自立したいい大人があれやれこれやれとしつこく指示され管理されるのも、それはそれでストレスです(上で書いた心理的葛藤と矛盾するようですが、その矛盾こそが人間のリアルというものだと思います)。

リーダーが周囲のメンバーを自分の言いなりにしようとする行為や言動は、多くの場合、結局は単なる傲慢さしか残りません。

もっと言うと、リーダーの指示や判断がすべて正しいかというと、そういうわけでもないのがややこしいところです。

(前述の震災時の例は極端にしても、一般的には)往々にして情報量は現場のほうが早くもあり多くもあります。特にマイナス情報はリーダーよりも当事者であるメンバーのほうがはるかに直接的に入りやすい傾向があります。したがって、情報の量的優位性に基づく現場判断は、経験や知見に基づく上司判断を上回る場合も少なからずあります。

そう考えてみると、やはり「行けたら行け」というのも使い方次第で、その言葉が生きる場面というのは、メンバーなり現場なりが、まず自立した状態であること。そしてそのうえでリーダーが最後に腹をくくってケツをふける、任せて責任を取るという覚悟が何より問われてくるのだと思います。

人間自分でやらないことに責任を持つというのは怖いものです。本来、任せるというのは楽なことではなく、とてつもなくしんどいことです。少なくとも、心配性の私はできる自信はありません。

「行けたら行け」は、そんな覚悟と胆力を併せ持ったリーダーにのみ使える言葉なのかもしれません。

※ 本文は筆者の個人的見解であり所属する組織・団体を代表するものではありません。

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