宮城・気仙沼に見る震災復興の矛盾 盛り土かさ上げ、防潮堤建設が巻き起こす不安

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突然の5.2メートル防潮堤計画

海に面した市街地では、防潮堤(海岸堤防)建設に懸念の声が持ち上がっている。

宮城県から防潮堤計画が打ち出された内湾地区

大島航路の船着き場がある「内湾地区」は気仙沼の海の玄関口とされ、震災前は観光客でにぎわっていた。

だが、海水面から5.2メートル(当初は6.2メートル)の高さの防潮堤建設を宮城県が打ち出したことで、「海が見えなくなる」「津波が防潮堤を乗り越えた場合、危険性が増す」と懸念する住民が少なくない。

石油製品販売業を営む高橋正樹さん(49)もその一人だ。高橋さんら有志は「気仙沼市防潮堤を勉強する会」を結成。行政の担当者や学識経験者を招き、防潮堤整備の法的根拠や制度的ルール、防災面での安全性や景観への影響、今回提案された防潮堤の構造など多面的な検証を進めてきた。

そのうえで、昨年11月には村井嘉浩・宮城県知事宛に要望書を提出した。そこでは、「地域の実情に合った防潮堤の整備」や「防潮堤の整備計画などを決める際に住民の意見を反映すること」などを求めている。

だが、ビルの3階近い高さの堤防建設の計画について、県は「人命尊重」を理由に抜本的に見直す考えを示していない。その一方で住民の合意を得られていないことから、堤防の高さは確定しないまま、現在に至っている。その結果として「災害危険区域」の指定が今後、流動的になる可能性があり、震災後の町づくりへの影響が懸念されている。

高橋さんは「なぜ5.2メートルの高さの防潮堤が必要なのか。なぜこの地域に住んだこともない人たちで、上から決めるようなやり方をするのか」と問題視する。そのうえで、「高さなどの根拠となる津波のシミュレーションの中身すら県が住民に示していないことは、計画そのものがいいかげんなものではないかとの疑問すら抱かせる」と語る。

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