宮城・気仙沼に見る震災復興の矛盾 盛り土かさ上げ、防潮堤建設が巻き起こす不安
だが、計画を知った春日さんは頭を抱えた。自宅の一部が拡幅後の道路部分に引っかかり、立ち退きを余儀なくされるためだ。その後、自宅を含む町内一帯は土地区画整理事業の対象地域になることも判明。さらに「盛り土かさ上げゾーン」に区分されたため、「工場も取り壊したうえで、ほかの場所に移転しなければならなくなる」と春日さんは話す。
自宅建て替えで“3重ローン”も
「70歳近くになって、新たな場所で一から再出発するのは厳しい。震災前からの借入金や震災後のリフォームに加えて、自宅や工場の建て替えでまた借金をしなければならなくなる」(春日さん)。
「きちんと相談させていただいたうえで、事業への協力を求めたい。住民の方には不安もあろうかと思うが、悪いイメージでとらえていただきたくない」と村上博・気仙沼市都市計画課長は復興計画への理解を求める。しかし、自宅や工場を建て替えるための資金を、被災者自身が工面しなければならず、重い負担がのしかかる。
国土交通省によれば、土地区画整理事業は戦災や震災からの復興、町づくりで大きな役割を果たしており、2007年度末までの着工面積は全国の市街地の3割に相当する約34万ヘクタールに達している。だが、津波被害が深刻な被災地で、事がスムーズに運ぶ保障はない。
盛り土かさ上げ工事の矛盾
春日さんが住む幸町1丁目では震災前に約130戸あった住宅のうち、約100戸が津波で流失し、現在残っている住宅は25~30戸に過ぎない。運良く自宅が残った人にとって、いったん立ち退きを余儀なくされる盛り土かさ上げ工事はありがたいものとは限らない。
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