モラトリアム法終了で、倒産は急増するか 苦境続く中小企業 金融円滑化法の功罪

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行政指導で実質延長

リーマンショックで苦境にある中小企業の救済を目的に、円滑化法が施行されたのは2009年12月。中小企業から申し出があった場合、金融機関は金利減免やリスケなど貸し付け条件を変更する努力を求められる。いわゆるモラトリアム法だ。

効果は絶大だった。円滑化法施行以降、企業の倒産件数は総じて低く抑えられている(図)。特に昨年11月以降の倒産件数は月1000件を下回る。

企業倒産の動向に詳しい東京商工リサーチの友田信男・取締役情報本部長は「月1000件割れは、日本の経済規模から見て異常な数字。倒産は人為的に抑制されてきた」と指摘する。円滑化法によって、多数の中小企業が倒産を回避できたのは間違いない。反面、問題の先送りでしかないという批判も根強い。

その円滑化法が2度の延長を経て、今年3月末で終了する。反動による倒産急増が懸念されていたが、融資の現場はおおむね平穏を保っている。政府が、実質延長ともいえる対応策を打ち出したからだ。

金融庁は金融機関に対し、4月以降も中小企業からの申し出があれば、融資条件の変更に応じるよう要請、引き続き定期報告も求める。2月には全国の財務局に中小企業向けの相談窓口を設置、個別の要望にも対応する態勢を整えた。

倒産回避を狙った行政指導の強化は、一定の効果を上げている。

首都圏で運輸業を営むB社は、期限の到来した借入金の返済に苦慮していた。金融機関からの提案によって、3月中に同額を借り換えることができた。「貸し剥がしのような動きはなく、金融機関のスタンスに変化は感じなかった」(財務担当者)。

とはいえ、これで問題が解決したわけではない。多くの中小企業の経営は依然として苦しいままだ。

1990年代後半から2000年前半にかけての銀行の不良債権処理問題は大企業中心、かつバランスシートと経常利益の問題だった。つまり、借入金さえ整理すれば事業継続のメドがついたケースが大半だった。だが、足元の中小企業が直面するのは、本業そのもの=営業利益が細っていくという問題である。

中小企業の本業立て直しで、各金融機関が期待をかけているのが再生ファンドの活用だ。

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