MBA坊主、ダボスへ行く! 世界が「日本的精神」を待っている

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世界が「日本的精神」に期待している

ではなぜ、私が?

これはきっと、これからの時代において、世界が「日本的精神」に期待していることの現れなのではないでしょうか。そして、その象徴としてお寺という「場」があるのです。あえて「仏教」と言わなかったのは、求められているそれがおそらく特定の「宗教」という枠に収まらない普遍的な価値に結びつくものだと思うからです。言い換えると、日本人にとってお寺というのは、仏教という特定の教えに帰依する場所というよりは、より普遍的な価値、たとえば「祈り」の気持ちを、そこに託するための聖なる場であるのだと思います。そのような、日本におけるお寺本来の価値を取り戻したいという試みを、私が続けてきたことを評価していただけたのでしょう。

世界が私たちに寄せる、お坊さんへの期待、お寺への期待、仏教的価値観を軸にしたこれからの日本社会への期待。世界経済フォーラムがYGLに仏教のお坊さんを一人選んだということは、現在の行き詰まった資本主義システムを打破する、古くて新しい仏教の智慧への大きな期待が込められているとみていいでしょう。

これから、お寺は変わります。そして、これからの日本、これからの国際社会における日本にとって、生まれ変わったお寺の存在が欠かせないものになると、私は確信しています。

思えば私は10年前に、「これからはお寺の時代だ!」という若者の根拠のない確信の下、飛び込んだお寺の世界で、仏教をもっと広めたい、お寺をもっと開きたい、という強い自分の思いでいろいろな活動を始めました。たとえば、お寺カフェ「神谷町オープンテラス」やインターネット寺院「彼岸寺」、僧侶向けお寺運営セミナー「未来の住職塾」などの新しい活動を、仲間とともに地道に重ねてきました。

しかし、そうして活動しているうちに「自分の思い」はだんだん変わっていきました。というのも、多くの人とのご縁の中で、その思いは自分だけのものでなく、驚くほど多くの人が共感し、同じように思ってくれているものであることに、気がついたのです。「お寺にもっと頑張ってほしい」という人々の思いをかたちにしていくことが、私の役目であると思うようになりました。

ところで、もし人が何かにおいて成功したければ、「深い」マーケティングが重要だと私は思っています。つまり、表層的なレベルではない、人の心の奥底にあるニーズに深く深く耳を傾けて、それが本当に求めるところを実直に目指していくことです。表層的なニーズはすぐに移り変わりますし、求める強さも大きくはありません。しかし、心の奥底で求めていることは、そう変わるものではありません。

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