徳洲会に翻弄、生駒市立病院建設の行方 日本最大の医療グループに懸念の声

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救急医療では、三次救急(重篤な救急患者に対応する救急医療)は近畿大学病院や県立奈良病院で対応しているが、依然不足気味。4月から「奈良県救急医療管制支援システム」を導入、二次救急(入院治療や手術を必要とする重症患者に対応する救急医療)は生駒近隣の5病院で輪番制を実施している。

また、生駒市には小児救急はなかったが、阪奈中央病院が4月に小児科を開設したほか、将来的に地域の救急輪番への参加も見込んでいる。こうした地域医療体制が充実しつつある中、さらに救急などを拡充していくなら、膨大な予算を伴う新病院建設よりも、既存の病院に補助金を出して強化することが先決ではないか。

徳洲会との基本協定がいまだ締結されていないことを問題視する声もある。徳洲会側は新たに建てる病院建物の減価償却分(定額で償却期間30年)に相当する金額を家賃として市に支払うことになっているが、「公募時の条件はあるものの、巨額な事業を文書で取り決めを交わすことなく進めている。今後、徳洲会に問題が生じて撤退した場合など、リスクにどう対応するのか」と中浦市議は不信感を抱く。

指定管理者の公募の際の条件では、家賃については、当初2年間は支払いを猶予することになっていたが、昨年これが4年間に延び、さらに条件が見直される可能性もある。また、市が作成した基本協定案では指定管理者の期間は20年と建物の償却期間よりも短い。21年目以降は、どうなるのかは決まっていない。

山下市長は3月の市議会で病院の建設工事について「4月に公告、5月に業者を決定、5月下旬から6月ぐらいには着工する予定」とし、基本協定書について「入札公告の前後には締結したい」としている。

「できれば撤退したいのでは」との声も

しかし、徳洲会関係者は「生駒市の病院建設は虎雄氏のひと声で決まった。同じようなケースで静岡県牧之原市の榛原総合病院で沖縄徳洲会が指定管理者となったが、その条件と比べると生駒市のほうが悪い。基本協定書締結どころか、できれば撤退したいのはないか」と話す。榛原総合病院では経営難に伴う病院長の退任などで、実質的に病院運営に空白状態になりかけた際「沖縄徳洲会がほとんど居抜き状態で指定管理者となった。その時の条件は家賃月500万円だが、その数倍もの補助金が付いて、しかも大きな医療機器は市側の負担」という好条件だったという。

まさか、この後に及んで徳洲会が白紙撤回するとは思えないが、内紛問題に端を発した徳洲会のほころびは、生駒市の病院建設にも大きな影を落としている。

木村 秀哉 東洋経済 記者

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きむら ひでや / Hideya Kimura

『週刊東洋経済』副編集長、『山一証券破綻臨時増刊号』編集長、『月刊金融ビジネス』編集長、『業界地図』編集長、『生保・損保特集号』編集長。『週刊東洋経済』編集委員などを経て、現在、企業情報部編集委員

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