徳洲会に翻弄、生駒市立病院建設の行方 日本最大の医療グループに懸念の声

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徳洲会と反社会的勢力との関係を懸念する声も上がっている。徳洲会は2月、虎雄氏の側近だった能宗克行氏をグループ統括会社、一般社団法人徳洲会の専務理事から解任、一般社員としても懲戒解雇した。能宗氏は生駒市の病院運営について当初の交渉担責任者で、11年に発覚した宇和島徳洲会病院での生体腎移植をめぐる臓器売買事件で徳洲会グループの役員が暴力団との関係が指摘された事件でも説明役を務めていた。

この事件を受け生駒市議会では、暴力団と関係のある人物がいる医療法人は病院の指定管理者として不適切であるとして、徳洲会を指定管理者から外す動きもあった。が、山下市長はこの際、生駒警察署に暴力団と医療法人徳洲会の役員73名について照会。その結果、「該当者なし」との回答を受け、そのような事実なかったとして不問にしていた。

しかし、今回能宗氏の解雇理由は「反社会的勢力に属する者」と協力関係があったこと。つまり、徳洲会自らが暴力団との関係があったことを認めたことになるのだ。能宗氏はこの件について、「暴力団との関係はもともと理事長が呼びこんだもの」と反論している。

一方、生駒市議会では議員から山下市長に対して「警察の照会結果と能宗氏解任理由は矛盾している」との質問があった。だが、山下市長は「報道が事実かどうか私には知るすべがない」と答弁。「(指定管理者である)医療法人徳洲会の理事について、能宗氏は解任ではなく、退任と聞いている。少なくとも理事であったときは暴力団との関係ないという返事を警察からいただいている」として、手続き上何ら問題がないことを強調している。

新病院の建設費等をめぐる不満もある。NPO法人生駒市民オンブズマン代表の土倉幸雄氏によると、新病院は近鉄東生駒駅近くの近鉄が所有する土地に借地方式で建設される予定(210床規模)で、市が負担する借地料は年間5400万円に上る。ほかの自治体では高額の借地契約をして事業を営んでいるところは多くない。また、「市は病院関連事業費を約80億円と見積もっているが、実際にはもっと大きな負担が発生している」(同氏)。

基本協定は未締結のまま

そもそも本当に病院が必要なのか、という疑問の声もある。生駒市には、総合病院だけで近畿大学医学部奈良病院、白庭病院、阪奈中央病院、倉病院、さらに近くの奈良市には西奈良中央病院、奈良西部病院、奈良県立奈良病院、と両市併せて7つもある。足りないのは、「救急医療と小児科、小児救急医療が課題」(生駒市議会関係者)だ。

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