「少子化の元凶」は本当に晩婚晩産化なのか

生物学的な面ばかり見ていても答えはない

・精神面はどうか:孤独な育児が増えている!?

次に出産育児をするうえで、精神面のキャパシティはどうでしょうか。今回のパネルでは、筆者以外のパネリストの中に、産後の女性の相談に応じている助産師さんがいらっしゃいましたが、相談内容を分析してみたところ、母親の精神的な余裕が年々下がっていると仰っていました。

データから状況が見えてきます。

まず、婚姻数が減っている中で、離婚率に関しては、ほぼどの世代も増加しています。この中で著しいのが20代の離婚率の上昇です。20~24歳の離婚率は、30~34歳の3倍近い確率。この中には、子どもがいて離婚している人も多く、日本のシングルマザーは2010年時点で100万人を超えているとされています。

そして、児童虐待をしてしまう母親の年齢層がいくつかの自治体が出している資料で調べられますが、暴力などの虐待から、軽いネグレクトのような状況に至るまで、いずれも若い年齢の母親のほうが虐待をしてしまう比率が高く、40代以降での虐待は逆に非常に低いことがわかっています。

離婚から虐待まで、地域のつながりが減って孤独な育児が増えていることなど、複合的な理由が背景にありますが、いずれにしても、母親が年齢を重ね、精神的にも安定したうえでの出産が、むしろ無理のない子育てにつながるという面もありそうです。

・キャリア面はどうか:早期のキャリア形成がますます重要に

筆者が参加したパネルでは、「20代は育児に軸足を置いて、30代半ばから職場復帰するモデルを示してはどうか」、という意見も出ました。しかし現実には、女性のキャリア形成からすると、そう簡単に実現できることではありません。脳科学的にも、記憶領域など30歳前後でピークを迎えるものが多く、30代半ば以降は、むしろそれまでに貯めた知識を開花させ、応用して仕事に生かしていく時期です。

女性が職場での地歩を固めるために結婚や出産を遅らせるという判断は、キャリア面からみれば当然の帰結でもあり、安易に批判すべきものではないと思われます。今後、多くの単純作業が、いずれ人工知能(AI)に取って代わられる可能性が高いことを考えると、キャリア形成を遅らせることのリスクはむしろ高まるといえるかもしれません。

他の先進国はどうか

冒頭でも述べたように、少子化問題では、「初婚年齢が上がったのが悪い、初産年齢が上がったせいで少子化が加速している」という議論が国内では多く聞かれます。しかしながら、先進国も押しなべて晩婚晩産化が進む中、少子化傾向が底を打っている国は多いのです。

先進国の中でも屈指の高い出生率(合計特殊出生率2.01)を誇るフランスは、政府見解で「女性の高学歴化、労働市場への参加が経済力を高めたことが出産増の背景であり、・・<略>・・初産年齢の上昇傾向が出生率に与えるマイナスの影響は今のところまったくみられない」と言っています。

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