「少子化の元凶」は本当に晩婚晩産化なのか 生物学的な面ばかり見ていても答えはない

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他にも「もう一人産みたいと思った時に産みやすい」「祖父母世代も比較的まだ若い場合が多く、孫の面倒を見てもらいやすい」「早く子育てが終わるので、その後にまとまった自分の時間が取れる」とたくさんのメリットが挙げられます。

生物学的にはそうかもしれないが…

確かにこの「適齢期」に産むことは生物学的には理にかなっており、少子化対策を考えるうえで、なるべくその間に子どもを産むように女性に認識してもらうことが正答であるようにも考えられます。「晩婚、晩産化が少子化に拍車をかけている。是正すべきだ」「妊娠適齢期について啓蒙しなかったのが悪い。もっと早く知っていたら産めたのにという人が多い」という議論も多く、啓蒙のために「妊活」という言葉も登場し、ある程度の周知は図られたように思います。

それでもなお、少子化が改善されないのはなぜでしょうか?

妊娠、出産、育児に関しては、以上のような「生物学的」な側面だけに着目しても解決しない課題があります。経済面、心理面、キャリア面から考えてみましょう。

・経済面はどうか:「おカネがないから産めない」が最大の理由

まず、子どもを持たない理由に関しては、国立社会保障・人口問題研究所『出生動向基本調査』の「理想の子ども数よりも予定子ども数の方が少ない理由」についてのアンケート(複数回答あり)をみると、圧倒的に多いのが「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という理由です。35歳未満で実に77.8%がそう答え、「子どもがのびのび育つ社会環境ではないから」という2番目の答え(27.1%)を大きく引き離しています。

厚生労働省の『少子化に関する意識調査』によると、男性は子ども1人を育てるのに必要と考える世帯年収は、子どもがいない世帯では最低必要額を平均714万円、子どもがいる世帯でも平均591万円と答えています。他方で20代の平均年収が約350万円、30代でも約450万円であることを考えると、このギャップは果てしなく大きく感じます。

ひるがえって、実際に子どもがいる家庭へのアンケート、内閣府『国民生活選好度調査』で「子育てで経済的負担が大きい理由」によれば、年収が低い層では「世帯年収が少ないから」、年収が高い層では「教育のための費用がかかるから」というのがいずれも大きなハードルです。双方から、経済的な側面が子育てにとって大きな壁となっていることがわかります。したがって、世帯年収がある程度伸びた年代のほうが産みやすい、育てやすい、というのがここから見えてくる答えかもしれません。

次ページでは、精神面についてはどうでしょうか?
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