ホンダ「NSX」は超高級車として通用するのか 10年ぶり復活したスーパーカーの実力と価値

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現在の高級車はすべてがスーパーでなければいけない。高級セダンだってスポーツカー並みの走りを備えていることが求められる。だからこそパワーやスピードだけでなく、マテリアルやコーディネートでも贅を尽くしてもらいたいと思った。

プレゼンはストレートに心に響くものだった

高級車にとってもうひとつ大切な感覚性能としてプレゼン能力がある。前述したように、このクルマに2000万円以上の価値があるかどうかは、スペックだけでは推し量れない。だからこそ数字を超える価値を伝えること、つまりプレゼンテーション能力が重要になる。

この点で見れば、メディア向けの新車発表会はすばらしかった。プレゼンテーションを行った開発責任者テッド・クラウス氏のメッセージは、我々日本人にとってストレートに心に響くものだった。さすが米国人はプレゼン上手だと思った。

生産を担当する米国オハイオ工場では、約100名の熟練工員が集結したこと、車体を回転させてミグ溶接を行っていくことなどを、現場の人間が自分の言葉でアピールしていた。寡黙にエンジン組み立てを行う様子を映し出すGT-RのテレビCMとは対照的だ。国民性が現れていると思ったけれど、ブランドアピールにはこのぐらいのわかりやすさが必要だという印象も抱いた。

プレゼンテーションの最後では、日本のホンダへの感謝の言葉も聞かれた。「子供の頃からずっと面倒を見てもらいつつ、仕事を任せてくれたからこそ、大人になってNSXの開発を進めることができた」と述べていた。新型NSXの開発や生産が米国主導で進められたことに批判を寄せた人も、このメッセージを聞けば考えを改めてくれるかもしれない。

フェラーリやポルシェをはじめ、多くのスポーツカーは第2次世界大戦後、北米での販売で成功を果たすことができた。それだけ米国にはスポーツカー好きが多い。

クラウス氏もそのひとりで、初代NSXに感動してホンダに入社した。こうした状況を考えれば、新型の開発が北米主導で行われたのは当然の帰結だと思えてくる。

エンジニアリングについては2000万円級の価値はある。残るは高級車らしい仕立てだが、この点については今後に期待したい。個人的に、NSXの3文字は911ターボやGT-Rに匹敵するブランド性は備えていると思う。それを光り輝く存在にするためには、やはりスペックに現れない感覚性能の磨き上げが大切になってくるのではないかと考えている。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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