QE3の運用は裁量的にならざるをえない

3月FOMCでも定量的な判断基準は示せず

せいぜい明らかになっているのは、道路標識の種類と、道路標識を見てアクセル・ワークを変えるタイミング(FOMC毎ではなく、おそらく定例記者会見が開かれる会合のみ)だけだ。

今回会合後の記者会見におけるバーナンキ議長の言及や、イェレンFRB(連邦準備制度理事会)副議長の講演(3月4日)などを踏まえると、「労働市場の見通し」に関する道路標識としては、失業率、非農業部門や民間部門の雇用増加数、労働時間、失業保険新規申請件数、雇用率、自発的離職率、実質GDP成長率などの現状や予測値が重視されるだろう。

しかし、これらの指標がどれ位の数値を示せばQE3のパーキング・ブレーキを入れたり、アクセル・ワークを変えたりすればいいのか、道路標識に描かれる内容(いわば速度制限表示)に関して一致した意見はない。

道路標識の中味について合意するのは容易でない

ここで非農業部門雇用者数を取り上げ、「過去6カ月に渡って毎月20万人ずつ増加した」という条件と「過去6カ月の間に累計100万人増加した」という条件について考えてみよう。

かつてエバンス・シカゴ連銀総裁が言及したQE3停止の条件なのだが、これはパーキング・ブレーキを入れるための標識なのか、それともアクセル・ワークを変えるための標識ととらえるべきなのか。

また、2つの条件はとても似ているが、2000年代に前者の条件が満たされたことはまったくない。さらに1975年以降の期間を取ってみても、この条件が満たされた期間は全体の1割にも満たない。前者はかなり高いハードルなのである。一方、後者の条件を確認すると、昨年8月以降、米国の労働市場はすでにこの条件を満たしている。このように、指標1つとってみても、道路標識を定めるのは容易ではないし、それに応じてアクセル・ワークをどれ位変更するのかもはっきりしない。

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