QE3の運用は裁量的にならざるをえない 3月FOMCでも定量的な判断基準は示せず

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19-20日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)は、1カ月850億ドルの証券購入(QE3)の継続を決めて終了した。声明文での現状判断は前向きとなり、FOMC参加者らの経済見通し(Summary of Economic Projections、SEP)では2013年から2015年までの失業率見通しが改善したが、QE3継続という判断に変化はなかった。

QE3のパーキング・ブレーキとアクセル・ワーク

今回の声明文では、QE3の運営に関わる部分に微修正が施され、FOMCの考え方をより簡潔、かつ正確に反映したものになった。

前回の声明文を振り返ってみよう。「もし労働市場の見通しが大幅に改善しなければ、物価安定の下でそうした改善が達成されるまで、米国債とエージェンシーMBSの購入を継続し、適切な他の政策手段を採っていく。資産購入の規模、ペース、構成を決定するにあたっては、いつものように、そうした購入によって起こりうる効果とコストを適切に考慮していく」

一方、今回の声明文には次のように書かれている。「物価安定の下で労働市場の見通しが大幅に改善するまで、米国債とエージェンシーMBSの購入を継続し、適切な他の政策手段を採っていく。資産購入の規模、ペース、構成を決定するにあたっては、そうした購入によって起こりうる効果とコストと、(労働市場の見通しの大幅な改善という)経済的目標に対して(実体経済が)どれほど進展するのか、という点について、適切に考慮していく」(括弧内は筆者)

前回と今回共に2つの文から構成されているが、今回は1つめの文から「もし・・・」という仮定表現が削除され、より簡潔な表現によってQE3の継続条件が示されたことがわかる。自動車の運転にたとえれば、「労働市場の見通しが大幅に改善した」という道路標識を見るまでは、QE3のアクセルを踏み続け、パーキング・ブレーキを入れないということだ。

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