QE3の運用は裁量的にならざるをえない 3月FOMCでも定量的な判断基準は示せず

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「コスト・ベネフィット分析」に関わる道路標識についても、同様の問題を抱えている。たとえばコストに関しては、金融市場機能への影響、将来の出口戦略への影響、FRBが保有する債券の価格やFRBの利潤(ひいては財務省への納付金)への影響、バブルのリスクなど、QE3が引き起こしかねないコスト項目(すなわち道路標識の種類)はおおよそ定まっている。

しかし、これらの項目をどう判断し、項目ごとの判断をどう比較考量するのかが不透明だ。そしてそもそも、QE3がもたらす経済へのプラス効果についてさえ、FOMC参加者の間で「合意がない」(バーナンキ議長)のである。

 ルールと裁量の両刀遣い

最初の利上げを決める金利ガイダンスに閾値を導入したのとは異なり、QE3の運営について、FOMCは今回も定量的な閾値を示せなかった。とは言え、金利政策ですら、最後は裁量的判断に委ねられる仕組みだ。「閾値が満たされれば即利上げ」というわけでなく、最初の利上げを考慮するための基準に過ぎないことは、今回の記者会見でも強調されている。バーナンキ議長率いるFOMCは、明確なルールの提示を志向しているように見えるものの、裁量的判断を軽視しているわけではない。

QE3について「数値ガイダンスがあれば越したことはない」し、「情報提供の努力は続ける」(共にバーナンキ議長)というが、現実には難しそうだ。つまり、QE3の運用にはかなりの裁量が働くと考えられ、「QE3がいつまで、どのように続くのか」についてはFOMC参加者らの発言に注意深く耳を傾ける必要がありそうだ。そうした発言次第で、QE3に対する市場の期待は大きく変わる。つまり、金融政策の透明性向上の努力が、かえって金融市場のボラティリティを高めてしまうおそれがある。QE3は難しい課題をFOMCに突きつけている。

小野 亮 みずほリサーチ&テクノロジーズ プリンシパル

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おの まこと / Makoto Ono

1990年東京大学工学部卒、富士総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社。1998年10月から2003年2月までニューヨーク事務所駐在。帰国後、経済調査部。2008年4月から市場調査部で米国経済・金融政策を担当後、欧米経済・金融総括。2021年4月より調査部プリンシパル。FRB(米国連邦準備制度理事会)ウォッチャーとして知られる。

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