QE3の運用は裁量的にならざるをえない

3月FOMCでも定量的な判断基準は示せず

一方、2つめの文では、今回、QE3のアクセル・ワークに関わる条件として所謂「コスト・ベネフィット分析」と共に「実体経済の改善度合い」が新たに掲げられたことがわかる。従来の声明文では、QE3のアクセル・ワークを決めるのはコスト・ベネフィット分析だけという形だった。

しかし、そもそも昨年12月会合後の記者会見で、バーナンキ議長は労働市場の見通しとコスト・ベネフィット分析に応じてQE3のペースを柔軟に変更していくというFOMCの方針を伝えていた。今回の声明文は、こうした方針をより正確に反映したものになったのである。

さらに2つめの文に関連して、QE3のアクセル・ワークが、緩めるだけでなく、強く踏み込むこともある点が明らかになった。バーナンキ議長は質疑応答で次のように発言している。「もし、労働市場が改善し、今後一層良くなると考える理由があれば、その時点で緩和度合いを弱めるかも知れない。しかし(中略)、その後、労働市場が弱まり、見通しが悪化するようなら、われわれは、もちろん緩和度合いを元の水準に戻すだろう」

 見る人によって違う道路標識の中味

今回の会合で、QE3のパーキング・ブレーキとアクセル・ワークについての基本的な考え方が整理されたものの、FOMCは具体的にどのように判断を下すのか。記者会見での質疑の大半が費やされたこの問題にまだ明確な答えはない。

これは、QE3を左右する道路標識の中味が人によって違うためだ。パーキング・ブレーキを入れるための「労働市場の見通しの大幅な改善」とはどのような状況を指すのか。QE3のペース等を見直すに当たり、「労働市場の見通しが大幅に改善する方向に向かっているのかどうか」をどうやって判断するのか。同様に、QE3のコスト・ベネフィット分析はどのように行われ、その分析結果は、労働市場の見通しの大幅改善を示す動きと、どのように比較考量されるのか等々、課題は山積している。

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