新日鉄が牽引する3社連合に温度差

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新日鉄が牽引する3社連合に温度差

ソフトアライアンス戦略を拡充する新日鉄を軸に、住金と神鋼の3社は提携関係を強化する。ミタルへの対抗軸を標榜するが、不安要因もはらんでいる。(『週刊東洋経済』11月17日号より)

 新日本製鉄と住友金属工業、そして神戸製鋼所の3社が、昨年誕生した世界最大の鉄鋼メーカー、アルセロール・ミタルへの対抗軸を鮮明にしている。3社は10月30日、それぞれの提携関係を強化すると発表した。核となるのは、住金・和歌山製鉄所の高炉増強(2012年度完成予定)と、住金から新日鉄、神鋼への半製品供給の拡大だ。

 「かなり大きな増産効果になる」。新日鉄の増田規一郎副社長は会見中、終始にこやかな表情だった。アルセロール・ミタルの粗鋼生産量は1億1720万ドル(06年)と、新日鉄の3倍超。売上高も約10兆円(同)で、新日鉄とは倍以上の開きがある。時価総額5兆円の新日鉄といえども、ミタルの買収圏外にあるわけではない。そこで同社は生産量「4000万トン+α」を目標に設定し、拡大路線へと舵を切った。

 ただ、新日鉄は慢性的な鉄源不足の状況にある。鉄鉱石とコークスから作られる鉄源=銑鉄の生産量が、鋼材のもととなる粗鋼の生産量を02年から5年連続で下回っているのだ。転炉にスクラップを大量投入してしのいでいる状態で、ミタル追撃には鉄源不足が足かせとなっていた。今回の住金高炉の増強はボトルネック解消の大きな一歩となる。

 住金の本部文雄副社長も「投資額は3社が活用する利点を考えれば十分に回収できる」と、3社連合ベースでの増産効果を強調する。とはいえ、900億円にも上る和歌山高炉増強の投資は、住金1社が全額を負担する。住金の決断には業界関係者だけではなく、身内からも疑問の声が上がる。

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