「百貨店」の常識が変わるとき

培ってきた資産は、常識を作ると同時に足枷になるのかもしれない

百貨店についても、同じことが当てはまる。「百貨店とは何か」を考えれば、百貨店の常識が浮かび上がってくる。スーパーと比べて高級感があり、価格帯は高め、若年層にはなかなか縁のない場所、など。

百貨店がこれまで培ってきた資産は、百貨店の常識を作ると同時に、足枷になっているのかもしれない。しかし、その足枷にとらわれ、この範囲でビジネスをしなければならない、というわけではないのだ。

「テナント」を再考する、囲い込まずに外に出せ?

百貨店の見方を変えるという点では、大丸にはさらにエピソードがある。大丸は、これまでにも旧来的な百貨店とは異なる施策を打ち出し、驚きを集めてきた。

かつて大丸神戸店は、元町の旧居留地全体を活性化するプロジェクトに取り組み、自らの地盤を強めることに成功した。

通常、百貨店というと、自社店舗の中に複数のテナントを入れ、全体で「百貨店」を構成する。これは、しばしば近隣の商店街との対立の契機になり、競争関係を作り出してきた。これに対して、大丸神戸店は逆の選択をしたのである。

当時、大丸神戸店は三宮駅から遠く、集客に苦慮するようになっていた。同時に、石造りの古い建物が数多く残された近隣は、旧居留地と呼ばれ、それを利用した商店街やオフィス街が形成されていたが、こちらも停滞にあえいでいたのだった。

大丸神戸店は、この旧居留地の建物を借り上げないかと打診される。そこで、神戸店内ではなく、旧居留地エリアに路面店として出店する新たなテナントを探すことになった。

この背景には、有名テナントの場合、特に海外では路面店が多く、必ずしも百貨店内に出店する必要はなかったことがある。さらに、旧居留地の建物には歴史の風格がある。商店街には不釣り合いかもしれないが、有名テナントにはうってつけの物件であったことが幸いした。

こうして旧居留地は思いのほか盛況ぶりを見せることになる。そこで大丸は、積極的に旧居留地の建物を引き受け、その中に本来百貨店内に入れることもできるテナントを誘致するようになった。結果として、百貨店の外側に多くの店舗が生まれ、旧居留地は街として活気を取り戻していった。

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