「百貨店」の常識が変わるとき

培ってきた資産は、常識を作ると同時に足枷になるのかもしれない

常識どおりのやり方以外許されないわけではない

街が活気づけば、正のフィードバックが働く。徐々に大丸神戸店とはかかわりなく、直接旧居留地に出店をしようとする人々が現れてくる。魅力的な店舗が集まれば、やってくる顧客の数も増える。その中で、大丸自体もまた、集客の恩恵を受けることになった。

百貨店が自らの内に有名テナントを囲い込むことは、一企業としては当然の選択である。けれども、その常識どおりのやり方以外許されないというわけではない。

大丸神戸店は、自身にとって大事な百貨店内のテナントを、思い切って一歩外に切り出してみることを決断した。もちろん、そうすれば必ずうまくいくというわけではない。

実際、大丸の同じ試みは、他の地域では神戸店ほどの成果を生んでいないようだ。しかしそれでも、常識を問い直し、見方を変える努力をすることの重要性は失われない。

大丸は、今回は逆の戦略を展開した。外部に切り出して街を作り出すのではなく、内部に百貨店らしくないテナントを取り込んでいくというわけである。

もはやそれを百貨店と呼べなくなることもあるのだろうか。

そのときは、われわれの百貨店に対する常識こそが、変わるのかもしれない。

 

 

【初出:2013.2.23「週刊東洋経済(投資の新常識)」

 

(担当者通信欄)

東京の東のほう、日本橋は本石町、日本銀行と道路一本はさんで位置する東洋経済ビルから走って1分のところに、日本で初めてデパートメントストアを宣言した三越の日本橋本店がございます。そこから目と鼻の先には、日本橋タカシマヤ、大丸東京店。そんな風に百貨店の集中するエリアにいる身にも気になるのが、客層の偏りです。手土産を求めるビジネスマン、ランチを調達しにくる近隣の勤め人、そのほかは主にぐっと年齢層高めの方々。日本橋エリアの常識は今後どう変わっていくのでしょうか。

さて、水越康介先生の「理論+リアルのマーケティング」、最新記事は2013年3月18日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、入門日本経済)」に掲載です!
【「値段相応」とは何か?値上げから顧客が見える】
いつもすいている、ちょっと価格が高いけれどおいしいラーメン屋さんの価値は、どこにあるのか?マーケティングの教科書によく出てくる「マーケティング・ミックス」実践例!

 

 
マーケティングの基本から勉強してみたい人のために!専門用語に混乱しない、親切設計の入門テキスト。水越康介・黒岩健一郎『マーケティングをつかむ』(2012年、有斐閣)
 
 
企業や市場の潜在性を掘り起こすための新しいマーケティング概念を提示!京都花街、マルちゃん鍋用ラーメン、はとバス、ロック・フィールド……水越康介・栗木契・吉田満梨/編『マーケティング・リフレーミング』(有斐閣、2012年)

 

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