「百貨店」の常識が変わるとき 培ってきた資産は、常識を作ると同時に足枷になるのかもしれない

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仕入れ機能を失う過程で新たに身につけた力

挑戦的に展開された銀座松坂屋だが、建て替えに伴う今年中の閉館が発表された(撮影:尾形文繁)

一方で、これまでの百貨店とは異なる方向性を模索しているといわれるのが大丸松坂屋だ。

大丸は、この数年で矢継ぎ早の企業買収を進めている。松坂屋と合併、最近ではパルコを買収した。さらに脱百貨店が標榜され、大丸梅田店にはポケモンセンターや東急ハンズ、銀座松坂屋にはラオックスやフォーエバー21が大規模に展開された。

大丸松坂屋は、仕入れ機能を失う過程で新たに身につけた、テナントを選別し運営する力を積極的に生かそうとしている。安易に人気の高いテナントを選ぶだけではない。そこには新しいノウハウがあったはずだというわけだ。

同じ現実に直面しながら、それぞれ方針が異なっているように見えるのは興味深い。きっと、どちらも新しい可能性を切り開いていくのだろう。そう思うのは、双方が、百貨店とは何であるのかを自らに問い直し、その中に活路を見いだそうとしているからだ。

とはいえ、個人的により興味深いのは、現状の批判をむしろ可能性として捉え直そうという大丸松坂屋である。大胆な発想の転換だ。

例え話を一つ。

裸足で歩くことが当たり前の社会で、靴を売ることはできるか?

とはマーケティングの世界でよく知られた問いだ。あるセールスマンは、そもそも裸足で歩くことが前提の社会で靴を売るのは無理だから、ほかを当たろうと考える。しかし、別のあるセールスマンは、誰も靴を持っていないのだから、苦労はあるだろうが、そこにはとても大きな市場があると考える。

どちらが正しいというわけではないのだが、話としては後者のほうが面白い。より魅力的に感じるのは、後者に二つの含蓄があるからだ。

一つは、常識にとらわれてはならないということであり、もう一つは、その常識に対する姿勢を変えることができれば、まったく新しいチャンスが見えてくるということだ。

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