親の小言に「過剰反応」しないハートの保ち方 「依存」と「攻撃」の連鎖に苦しまないために

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もし、あなたが、小学生以下の小さい子どもを持つ立場であれば、このような発言に腹が立つのが容易に理解できるはずです。経済的な問題なのか、勉強の出来の問題なのか、いずれにしても、とにかくダメな部分を指摘されているようで悲しくなるわけです。

つまりAさんの立場からすると、「あなたのところは稼ぎが少ないから、そんなこと言われたら困るわよね」と受け取る場合もあるでしょうし、「あなた(もしくは、配偶者)の学力じゃ、いい学校は無理ね」と言われたような気持ちになったり、さらには、「うちの子どもには能力がないってこと!?」と思ったりしてしまいがちです。

それなりにやりがいをもってやっている仕事について、ちょっとした愚痴をこぼしただけで、親に「そんな仕事させられて、かわいそうに」などと言われるのも、同じような負の感情を生じさせるでしょう。

親からすると「単なる世間話じゃないの」という感覚ですから、子どもが反発しようものなら、「そんなことで怒るなんて、あなたと話もできやしない」となるわけです。親は、単純に思いを発しただけのつもりだとしても、受け取るほうとしてはたまったものではないのですね。

親に対して「きっぱり反抗する」のは意外と難しい

なぜこうもとらえ方に温度差があるのか……、理由は単純ではありません。親は、子どもが幼少の頃から「こうあってほしい」と、自分の中に理想を持っているゆえに、子どもに対し「この点数は何なの?」「どうして早くできないの?」「きちんとしなさい」と小言を言いがちになります。

その理想が大きければ大きいほど、子どもに負担として伝わります。そして最も大きな問題は、親自身がそれを悪いことだと思わず、相手のため(子どものため)と言う意識を強く持っていることです。ですから、その子に対するコントロール欲求はなかなか制御されず、どんどん強力になり、子が大人になっても続いてしまうのです。

一方で子どもは、親からの願望に表面上は反発しつつも、完全には逆らうことができない気持ちに追い込まれます。高校生までだったり、大学生までだったり、人によってタイミングはまちまちであれ、本来は大人になれば自分の意思をきっぱりと示すことができるはずなのに、そのことを自覚できないまま単にイライラだけを募らせ、親と接しただけで落ち込んでしまう……という現象に陥るのです。

生活から仕事まであらゆる面に口を出したい親と、そこまで言われるのは心外だと感じる子ども。抵抗を示せば、親からは「あなたはだから○○なんだ」、子どもからは「いつもお母さん(お父さん)はそうなのね」という、まったく建設的でないやり取りが生まれます。

あげくの果てに「そんな娘に育てた覚えは無い」とか「あんたなんか生まなきゃよかった」と言う暴力的な言葉まで飛び出してしまうことも。これらの表現が、一方的な全否定だということを、親はどれだけ認識しているのでしょうか。

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