トランプ流「移民脅威論」は何がおかしいのか 数は水増しされ経済への貢献も無視している

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戦火や民族紛争で疲弊した祖国を逃れ、日本に救いを求めてやってくる難民申請者も増加の一途をたどっている。写真は、トルコ国籍のクルド人、マズラム・バリバイさん(24)と妹のスーザンさん。埼玉県蕨市の自宅で昨年10月撮影(ロイター/Thomas Peter)

多くの国で移民に関する議論が湧き起こっている。移民問題は世界の政治・経済に多大な影響を及ぼすが、事実というより感情によって議論される傾向にある。そのためメリットやデメリットを含む建設的な議論は進んでいない。

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たとえば欧米における大衆主義の指導者は、水増しされた数値や誇張した表現を用い、人々の不安をあおって移民の議論を操作しようとしている。こうしたレトリックは、多くの移民の心を傷つけている。

英国では6月に行われたEU(欧州連合)離脱をめぐる国民投票の前後で、移民に反発する内容の通報が前年比で約4割増加したという。タブロイド紙と大衆政治家が躍起になって描いた、歪められたビジョンに影響されたのである。

東欧の「イスラム移民」は現実の70倍との見方も

反移民感情は世界中に広がっている。大衆主義者に扇動され、排他的な思想や保護主義政策を容認すれば、結末は悲惨なことになろう。今こそ理性的な政治的指導者やマスメディアが、移民に関する建設的な議論を主導すべきである。

まずやるべきは、移民の流出入に関する正確な数値を把握し公表することだ。そして多くの問題は移民に責任がないことを明らかにすべきだ。移民による経済的・社会的な貢献も評価すべきだろう。

ほとんどの国で移民数は過大に見積もられている。東欧諸国の一部では、イスラム教徒の移民数が現実より70倍も多いとの見方もある。

実際、母国以外で生活する人々の割合は、ここ数十年間でほとんど増えておらず、現在も世界人口約75億人の3%前後で推移している。この5年間では、世界人口のわずか0.5%が母国を離れたにすぎない。

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