「招かれざる女性上司」、男社会でどう生きた? 横浜市長 林文子氏に聞く(上)

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「報・連・相」は上司から

わたしが最初にマネジメントの立場についたのは、47歳の時。1993年にBMW東京の新宿支店長に就任しました。今はそんなことはないと思いますが、その当時は女性の支店長がとても珍しかったのです。特に輸入車販売の世界で女性の支店長はほとんどいなくて、就任した後に新聞が取材にきたくらいでした。

もちろん、その支店にいた部下も女性の上司を持ったことがありません。誰も女性の上司に対してどう接していいのかわからないという状態でした。そんな環境でしたから、まずはみんなに自分がどういう人間なのかをわかってもらわなくてはいけない。

わたしはもともと自動車の訪問セールスを長くやっていましたので、お客様に対して自分から心を開いてどんな人間かを伝えたうえで、相手の話をよく聞いて思いや考え方を受け止めるという経験をずっと積んできました。

そのような経験を通じて、「報・連・相」をするのは上司のほうだ、という考えを確立していったのです。普通、「報・連・相」は部下がするものだと考えるでしょう。でも、実はそうではないのです。

相手のいいところを見つけて、それをほめる。感動したとか、素敵だと思ったことがあれば、率直に伝える。わたしは人にお会いしたら、必ず相手のいいところを探します。それは決して無理に自分自身を演出しているのではありません。営業で多くのお客様と接していく中で自然と身につけてきたことです。

そうすると、相手は心を開いてくれるのです。ふっと話すきっかけができる。上司と部下でもそれは同じです。自分から話をして、部下のいいところをほめることを心掛けていました。

自分たちが働く場のよさを伝える

最初に支店長になった新宿支店は、業績が低迷していました。ちょうどバブルがはじけた後で車がなかなか売れず、みんな元気がなくてモチベーションも下がっているような状況でした。そうすると、自分たちの働いている環境を快く思わなくなってしまいます。仕事に対するプライドも失ってしまう。そこでわたしが何をしたか。

わたしはまず、自分たちが働いている場所がどんなにいいところなのかを、あらためてみんなに気づいてもらおうと思いました。最初はみな、初めての女性の上司にとまどっていて遠巻きにしていましたから、時間を見つけては新宿の町を一人で歩き回りました。

そこで見つけたおいしい食べ物屋さんや景色のきれいな場所のことを、朝礼やちょっとした機会を見つけては部下に伝えました。「ここはいい職場だ、わたしはこの支店に来られて本当によかった」と。

だって最初は招かれざる客のようなものでしたから。業績不振だった支店に突然女性の支店長が送り込まれてきて、部下はこの支店長で大丈夫なのかという不安でいっぱいだったはずです。部下は、最初はその上司がどんな人なのかわからないと、警戒するものなのです。

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