地味な「浜松町」、野村不動産が社運賭け一新 3500億円投じ東芝本社建設や水上タクシーも
紆余曲折を経て野村が手にしたNREG東芝不動産は、今振り返れば相当いい買い物だったと言えるだろう。同社は2009年3月期からコンスタントに120億~200億円の営業利益を上げ続けているうえ、野村の賃貸事業の拡張に大いに役立った。現在、賃貸事業の部門利益のおよそ半分は、NREG東芝不動産が稼いでいる。そのうえ、延床面積約15.9万平方メートルの浜松町ビルディングは野村の所有ビルの中で圧倒的に大きい。今回の一大プロジェクトのタネにもなり得たというわけだ。
野村は「プラウド」ブランドで知られるマンション事業が非常に強く、総合不動産デベロッパーの中では唯一、住宅部門の売上高が最大となっている。他社はすべてオフィスなどの賃貸事業が主力だ。とはいえ、マンション販売は好不調の波が大きく、国内首位級の野村といえども、その依存度の高さが全社的には弱みでもあった。
2015年秋に発表した中長期経営計画の中で、野村は2025年度に営業利益を1500億円へとほぼ倍増させる計画を掲げている。マンションは海外も含め5割伸ばす計画だが、それ以外の賃貸事業や管理・運営事業は倍以上に拡大させることを目論む。今回の再開発計画は、中長期経営計画の期間とはややずれるが、賃貸事業などの拡大を図り、収益構造を変えていくという方針と同じ路線上にある。
山手線の駅から徒歩5分でも広大
浜松町ビルディングの建て替え計画は東京圏国家戦略特区会議で審議されているほか、すでにテナントや近隣への説明も始まっている。そこから、この大勝負に勝算を見出した、野村の計算が透けて見える。
現在、浜松町ビルディングの周囲は緑地や平置き駐車場となっており、山手線の駅から徒歩5分の土地とは思えないほど、だだっ広い。その4万平方メートルの土地がこのビルの敷地だ。そのため、現在立っているビルを取り壊すことなく、敷地内に新しいビルをまず1棟建てる。そこに既存テナントの誘導を図ってから、旧ビルの解体と2棟目の建設に進めることが可能とみられる。そうなれば、大型ビルにはつきものの、竣工と同時に需給悪化を招く大量空室の懸念は、相当程度緩和されそうだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら