物事の見え方は人によって異なる
じゃあ次はこの画像。どっちに回転しているように見えますか?
記者:左回りですかね。
カメラマン:右回りですかね。
記者:えっ?ウソっ?左回りですって!
この画像はシルエット錯視と言って、脳の使われ方によって見え方が変わってくるんです。左脳を重点的に使えば反時計回りに見えますし、右脳を使えば、時計回りに見えます。同じ人が見ても、その時の脳の使われ方によっては逆回転に見えるとも言われているのです。
つまり、何が言いたいかというと、物事の見方というのは人によって違うんです。特に摩擦が生まれるのが親子の関係。どうしてもかわいい子供に親の見方を押し付けてしまう。でも最近の親の意識を見ていると、どうしてもいい大学、いい会社に、と近視眼的になってしまうようです。それは子を思う親として当たり前かもしれません。でも子供を失敗させまいとして先回りしすぎかな、という印象も受けます。
環境は日々、変化していきます。親の世代の考え方は、子供が大人になる頃には通用しなくなっているかもしれません。アメリカ・デューク大学の教授によって発表された興味深い研究結果があります。それは、「2011年に小学校に入学した子供の65%は大学卒業時に現在は存在していない職業に就く可能性が高い」というものです。
確かに、たった10や20年で技術は考えられないほどの速さで進歩します。それに合わせて仕事も働き方も教育環境もドラスティックに変わらざるをえません。
「女子学院のコア」は変わらない
でも、女子学院で養う「コア」になる部分は変わりません。女子学院のカリキュラムを通じてバランスのとれた「知の足腰」を育てることは、激しい環境の変化にも対応できるようになると思います。植物生理学でいうと「静止中心」のようなものですね。
――すみません、例えが難しすぎてちょっとわからないのでもうちょっとくわしく教えてください……
植物には「静止区域」というものがあります。植物が成長するのに、細胞分裂を続けて、葉っぱや花をつけていきますよね。でもその中に、細胞に分化できる「予備軍」として分裂能を維持しながら、「それ自身は変化しない」細胞があるんです。それが静止区域です。仮に、外的な環境変化が起きたとしても、分裂はするけれども、分裂後の一方の細胞は分化することなく、環境の変化などに対応できるような「予備軍」の細胞として、分裂能を保持したまま変化せずに存在し続けるのです。