全米を席巻する「ミスター・ロボット」の裏側 大人気TVドラマ、主演俳優が語る
──シーズン2の撮影は順調ですか?
撮影は3月のはじめ……そう、3月7日に始まった。シーズン全体をまとめて撮影しているんだ。サムがすべてのエピソードを監督するんだけれど、製作会社と放送局からは「君が監督するのもいいが、前もって全エピソードの脚本を書き終えておくように」と言われたそうだ。だから、サムは撮影が始まる前に10話分の脚本を書き終えたって言っていてね。それだけでもすごいことだよ。だって普通は、次に何が起こるかわからない状態で1話ずつ進めていくものだから。
でも、サムはこういう状況にも対応できるタイプの人なんだ。全10話を1本の映画のように撮影したいなら、彼ほどうってつけの人材はいない。でも、今撮っているエピソードから数話分先のシーンも撮影しなくちゃいけないんだから、監督の苦労は大変なものがあると思う。たとえば、1日の撮影で1話を撮っていると思ったら9話に飛んで撮ったりとかね。
撮影の進め方
──実際にはどのように進めるんですか?
たとえば地下鉄で撮影する場合、1話から10話に出てくるすべての地下鉄のシーンを撮影してしまうんだ。
──それは難しそうですね。
その通り。すべての登場人物が複雑なキャラクターだし、様々な面を持っているんだけれど、各キャラクターはストーリーの展開とともにどんどん変化していくんだ。それはシーズン1を観てもらったらわかってもらえると思う。
皆、最初に登場した時と全然違う。どう頑張っても予測不可能なくらいさ。特に僕のキャラクターはそう。僕はリスクを冒したり選択を迫られるのが好きな俳優だから、喜んで飛び込んじゃうけれど、自分の役を知り尽くしていないと苦労することになるね。
──シーズン1と新シーズンの違いは?
じつはかなり違う雰囲気なんだ。でもいい意味で、だよ。新シーズンは、シーズン1が終わったところから始まっていて、エリオットが自分の頭の中の世界に気づき、そのことで自己が崩壊してしまいそうなほど苦しむところから始まるんだ。
彼は自分をコントロールしようとしてもがくんだけれど、コントロールできるのか、それともただの幻想なのか……でも、そういう物語のひねりは視聴者を驚かせることを目的としているわけじゃない。
サムの脚本のスタイルは、何が現実で何が現実ではないのか、視聴者が常に自問するようにできている。「僕たちの現実とは?」「僕たちが持つ真の影響力とは?」という具合にね。今シーズンでは、こうした変革を望んだ結果がもたらす因果を描いていて、マイナスの結果とは何か、人は望みを手に入れるためにどこまでやるのか、が主なテーマだといえるよ。