全米を席巻する「ミスター・ロボット」の裏側 大人気TVドラマ、主演俳優が語る
──オーディションはどうでしたか?
脚本を読んでいると、サムはずいぶん楽しそうにしていたよ。少なくとも僕の目にはそう見えた。ただ、サムがその場で何かを“見い出した”からかどうかは分からないけどね。でも実際に撮影が始まってからは、僕の演技を楽しんでいる感じはまだない……(笑)。慣れちゃったのかもね(笑)。
──最初に脚本を読んだときの印象は?
素晴らしいと思った。夢中になって読んだよ。体中に突き刺さるようだった。とても示唆に富んでいて感情を揺さぶるストーリーだし、洗練されていてタイムリーで……。とにかく時代の先を行っている感じだった。
だから僕はひそかに思ったんだ。「誰もやろうとしないだろうし、金を出す人もいるわけがない」ってね。ある意味、評価は分かれる作品だと思う。それに『ミスター・ロボット』ってタイトルじゃ、いかにも失敗しそうだし(笑)。
人気を得た理由
──なぜこのドラマは爆発的な人気を得たのでしょうか?
今の子どもたちは、自分たちが世の中に与える影響を強く自覚している。それと同時に、人々は今の世界のあり方にうんざりしているような空気もある。この世は常に問題だらけだから。でも、政府が解決に全力を尽くさなくても、僕らにできることがあるかもしれない。そういう諦めに抗う精神が、このドラマにはあると思う。
エリオットのような欠点だらけの人間が、ヒーローとして未来を託されるっていうところもいい。このドラマのキャラクターは全員、闇を抱えてるだろ?彼らは自分の殻を破って、内に秘めた強さを見つけ出し、世界に何らかの変化を起こそうとする姿を描いているんだ。
──このドラマに取り組む前からコンピューターには詳しかったのですか?
そんなことはなくて、今も苦労してるよ(笑)。僕は演技以上に、事前の準備としてコンピューターの知識を得ることに力を入れてきたんだ。本物に見えなかったら誰もエリオットに入り込めないだろうからね。
先日の撮影でも時間が想定以上にかかってしまって、キーボードを打つシーンで代役を用意しようということになったんだ。でも、僕は断ったよ。だって映っている手が本当に僕の手かどうか、見ている人にはわかってしまうから。だから自分でやりたかったんだ。
動作としてのタイピングだけでなく、タイプする内容も勉強したんだよ。だから……だいぶレベルアップしたと思う(笑)。コンピューターについてはまったくの初心者だったし、ハッキングなんていう芸当は絶対に出来なかった。でも今は少しくらいは理解できるようになったよ。