退任したほうが会社のためになる取締役も多い
頭をすげ替えなければならないのは、取締役の皆さんも同様だ。日本では残念なことに取締役と経営陣が一心同体で、コーポレートガバナンスのコの字もないことが多い。
そしてけしからんことに、見かけ上、“社外取締役比率”を高めるためだけに、社長や経営陣のお友達を社外取締役に選任するのだ。こういう経営陣は会社がどれだけ苦境にあり、競争が激化し株価が下がり配当が滞っても、恥知らずなことに堂々と億単位の給料を自分自身に支払っていたりする。
たとえば時折、日本の企業の社長給料ランキングなどが発表されているが、全然儲かってなさそうな産業で、イノベーティブで強力なリーダーシップを発揮し、企業価値を高めているとは到底思えない会社の創業社長たちが、上場後も実質オーナーとしてわが物顔に振る舞い、その貢献度とはかけ離れた高額報酬をむしりとっている(例を挙げたいところだが、産業名を言った時点ですぐわかる人もいるので、涙を飲んで割愛)。
会社の利益が下がり、株価も急降下してブックバリューも割れているのに、この人たちが何億ももらうのは、投資家や他の社員から富が移転しているだけのことなのだが、なぜみな怒らないのだろうか。
会社の成長に貢献できない創業者は会社を去るべし
さて、こんな迷惑な経営陣の給料は、はたしていくらくらいが妥当なのだろうか。
第一に、彼らが1年間一生懸命働くことで、他の優秀な社長を頂いた時に比べどれだけ会社の利益(社員、顧客、社会などさまざまなステークホルダーの利益)が上がるかという“バリュークリエーション(付加価値創出)”の観点があり、第二に、この社長はいま会社をクビになったら、外でいくらもらえるか、という“社長の市場価値”の観点がある。
総じて(一部の例外は除いて)60~70代の創業社長の市場価値はゼロというかマイナスであり(おカネをもらっても来てほしくない、という社長が多いのではないか)、給料泥棒の彼らは給料が何十分の一、何百分の一の一般社員の命運を大規模に左右している。
創業者としての貢献が金銭的に報われるべきなのは確かだが、それは退任するときに株式を買い取ってもらうなどの形でするべきで、売り払った会社の今後の成長を阻害するようなかかわり方をしてはいけない。これは創業者に対して極めて甘い、アジア文化圏で共通して見られる課題である。
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