頭部が飛ぶような”大リストラ”を始めよ 社長にもワークライフバランスなんていらない

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銀行から株主へのコーポレートガバナンス役割交代

間接金融から直接金融に経済が移行する中で、コーポレートガバナンスを利かせる役割は、銀行から直接金融の機関投資家へ移行しなければならなかったはずだ。しかし現実には、機関投資家は経営陣と対立することを好まない。そして経営陣に厳しい目を光らせるモノ言う投資家は、お行儀が悪い、ということでつまはじきにされる。

その最たる例は、オリンパスの堕落した経営陣を国内機関投資家が一同支持した事例である。マイケル・ウッドフォード元社長が投資家のために粉飾を見破り改革に乗り出したはずが、会社からも投資家からも見放されてしまった。これは日本の伝統文化の負の側面かもしれないが、悪いことをしている人達とも“和をもって貴し”とする傾向があるため、いったん悪い方向に社会全体や企業全体が進み出しても、みんなが一斉批判を始めるまでは歯止めをかけづらいのだ。

変革の過渡期にある日本企業には、“和をもって貴し”となさない新しいリーダーが必要なのだが(といっても協調性がなく単に自分勝手な人は大迷惑なので、バランス感覚が必要なのは言うまでもない)、実際は変革の最大の阻害要因になっている古い経営陣が、銀行や株主とずぶずぶの関係の中、会社の衰退に拍車をかけている。

外部からしがらみのない経営陣を雇え

伝統的な社内生え抜きの経営陣は、会社の内情をわかっていて、会社が成長している時の調整役とするにはちょうどいい。しかし経済成長が低下し、企業利益も圧迫され従来のビジネスモデルを転換しなければならなくなったとき、外部から優秀な“チェンジリーダー”を雇い入れることが有用なこともあるが、日本では“昔からの頭をすげ替える”ことへの抵抗が非常に強い。

あなたの会社でも出る杭は打たれる、出ない杭だったからこそ今まで生き残っていただけ、という経営幹部が多いのではないか。彼らは総じて、引退した昔の経営陣や社内のもろもろの既得権益層にがんじがらめになっており、いわば政治家の古いおじさん軍団のように、必要な構造改革を行えず痛みの伴う改革は先送りされる運命にある。たとえば不採算部門の閉鎖にしても、「先代の社長が始めた事業だから売り払えば次のOB会で何を言われるかわからない」といった理由で構造改革が先延ばしにされている。

そして、しがらみのない人が改革しようとすると、既得権益層である自分たちがもたらした問題なのに、その改革主導者であるニューリーダーに一斉に非難を浴びせ、既得権益の一部である(われらが東洋経済を除く)レベルの低いマスコミを巻き込んで“一億総アホ国民キャンペーン”を始めるのである。その最たる例が2000年代初頭の不良債権処理や郵政改革への大批判であろう。

江戸幕府からの明治維新にせよ、カルロス・ゴーン氏による日産復活にせよ、オリンパスの前社長による不正告発にせよ、小泉政権の竹中平蔵氏にせよ、言い古された当たり前の話で恐縮だが、しがらみに切り込んだからこそ思い切った改革が断行できたのである。

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