フェラーリの4人乗り「GTC4ルッソ」の実力 「競合はレンジローバー」SUVブームへの回答
今の時代の「真のラグジュアリィ」とは
7月初頭の南チロル地方は、バカンスシーズンが既に始まっていた。どこもかしこも休日を楽しむクルマやバイク、自転車だらけ。その中をゆっくり、時には大渋滞に巻き込まれながら、GTC4ルッソを流す。
これまでの跳ね馬であれば、クルマから“さぁさぁ、もっと踏めよ、走れよ”と煽られながら解放できないという状況に、乗り手の欲求不満は溜まる一方だったはず。
GTC4ルッソは、違った。のろのろと走っているときでも、パワートレーンのマナーが素晴らしい。V12はあくまでも静かな音色を奏でており、耳に心地よく、心を落ち着けていられる。乗り心地だって、硬めだが心地の悪いものじゃない。この余裕の持たせ方こそ、今の時代の“真のラグジュアリィ”というものだろう。高級車をイライラしながら運転することほど、みっともないことはない。金持ち喧嘩せず、そして苛つかず。そんな心境になるクルマなど、これまで、ロールスロイスとベントレーしかなかった。
もちろん、その真骨頂はスロードライブにあらず。GTC4ルッソが実現した、最新最高のGTパフォーマンスは、そのスピードを徐々に上げて行くなかで、誰でもすぐさま実感することだろう。自然吸気のV12は常に滑らかかつスムースに回る。適切な力を供給しつつ、加速の安定感はといえば、発進から高速域まで、ほとんど完璧。スリルに乏しいのが残念に思うくらい、速度感がない。
スポーツカーとしても、楽しい!のひと言。新しい4RMシステムのおかげで、タイトベントから高速コーナーまで、ドライバーが多少クルマに無理強いしても、まるで意に介さず、きれいな弧を描いて曲がっていく。まるで、運転が急に上手くなったような気分になる。
なにより、高回転域におけるV12自然吸気のエンジンフィールはこの上なく胸のすくもので、世界最高だと断言する。スムースさと気持ち良さという点で、これ以上のエンジンなど他にない。完璧に伝統的なフェラーリ ワールドでもあった。
結局、ドライバーはずっと“楽しい気分”でいられた。ドライバーズカーの何たるかを熟知し、他の人気ミドシップロードカーや、カリフォルニアT、F12といったFRモデルとの差別化を重要視した、今のフェラーリ社らしい、それはクルマ造りだと言っていい。
(文:西川 淳)
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