――公費だと、そんなに手間暇がかかるんですか?
かかりますね。公費は基本的に、現金で配当されるわけでもなく、通帳におカネが入るわけでもないので、一つひとつ、市の会計課を通して支払いをしなければいけないんです。
だからまず、業者に債権者登録をしてもらって、教育委員会を通して、会計課に請求書を出してもらう、という流れになります。どうしても現金払いが必要なときは、「資金前渡」という制度を使うのですが、これはさらにひと手間かかります。
先生からしたら、明日の授業に必要なものを、近所のお店でさっと買ってきて、教材費として保護者から集めたほうが簡単ですよね。公費で買おうとすると、少なくとも2、3日はかかりますし、見積もりや伝票処理など事務職員の仕事も増えます。
でも、「それはそういうものだ」という認識をみんなが持つ必要があるでしょう。基本的に公教育は公費で運営するべきです。面倒でも、そこはしっかりやらないといけません。そのためには、通常は公費だけ取り扱う事務職員が、公費と私費の両方を総合的に扱っていく必要があります。公費を上手に使えば、必ず私費は減らすことができるからです。
たとえば模造紙など、事務職員を通さずクラスや学年ごとに買うと私費になりますし、高くつきますが、公費で全校分まとめて買えば、だいぶ安くなります。
工夫をすれば私費は減らせる
先生たちは学校財務のことを知る機会がほとんどないので、保護者負担金を減らす必要性もあまり感じていないことが多いです。そのため、学校財務の担当者である私は先生たちにそのことを伝える研修を行っています。こういった説明を聞けば、先生たちの認識が変わりますし、そうすると行動も変わってきます。
――たとえばどんなふうに変わるのでしょう?
ある教科の先生が、毎年500円の資料集を2冊、保護者負担で購入をお願いしていたんですが、私と相談してそれをやめ、教員用資料集を1冊だけ公費で購入するようにしました。付属の専用CD-ROMをパソコンにつないで、大きなモニタにつなげば、生徒全員で見られるから、ということで。
これで各保護者の負担を年間1000円ずつ減らせましたし、やってみたらこのほうが子どもたちも顔をあげるので、先生もかえって指導がしやすかった、と言っていました。
あとは以前、教室のカーテンのクリーニング代が、なぜか私費の教材費にまわっていたことがありました。そこで公費で洗濯機を購入して、カーテンは校内でクリーニングするように変更して、教材費からの支出はなくなりました。「洗う人」の負担は増えますが、そこは保健委員会の生徒などにも協力してもらいました。
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