今は全国的に子どもの貧困が広がり、経済的に厳しい状況の家庭も増えています。それぞれの集金は少額であっても、ちりも積もれば山となります。学校から求められる金銭的な負担が、家計を圧迫しているケースも珍しくありません。
「学校のおカネ」は、どのように区分・管理されているのか? 保護者の費用負担は、どこまでが妥当なのか?『本当の学校事務の話をしよう』著者・柳澤 靖明さんに、学校事務職員が担当している「学校財務」について、話を聞かせてもらいました。
なぜ公費でなく私費負担に流れやすいのか?
――学校が扱うおカネは、どんなふうに区分されているんですか?
大きく2つ、「公費」と「私費」とに分けられます。「公費」は要するに自治体から配当される税金です。学校の備品や教材購入費、施設設備の修繕費等々にあてられます。
「私費」は保護者が負担するおカネです。「保護者負担金」「預かり金」「学校徴収金」などと呼ぶこともあります。私費のなかでも、学級費、教材費、卒対費、校外学習費、学校給食費、PTA会費など、さまざまな区分があります。
――なぜ学校教育に必要なものをすべて公費で賄えないんでしょう?
簡単に言うと、公費の配当が足りないからです。予算がない、というのは、戦後からずっと言われていることなんですけれどね。
しかも今は「私費ありき」の発想になっていて、さまざまな費用が安易に保護者負担にまわってしまう傾向もあります。私費はあくまで、「公費でどうしても足りない分を補てんするもの」であるはずなのですが、そのことが忘れられがちなのです。
――なぜそうなってしまうのでしょう?
原因のひとつは、何を公費で賄い、何を私費で賄うべきか、その区分が不明確なことです。
自治体によっては、「子どもが持ち帰るようなものは私費で負担する(受益者負担)」など、要綱等で区分が定められているのですが、その区分がない自治体もあります。また、区分があったとしても自治体によりその区分が異なるという問題もあります。
それから、公費と私費が「それぞれ別々に動いている」ことも大きな要因でしょう。
大概の場合、「私費は教員」が、「公費は事務職員」が担当しています。もし先生が公費で何かを欲しいと思った場合、事務職員や教育委員会を通して処理しなければならず、そうすると手間や時間がかなりかかってしまう。それで私費に流れがちなのです。
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