世界が北海道の地元コンテンツを求めている 札幌テレビ放送が独自に開拓した世界への道
同時に、系列局から「STVさんは海外頑張っているそうだけど、どうやればいいの?」と聞かれることが増えました。地方が疲弊しているなか、外国人観光客に注目が集まるのはどこも同じで、STV以外の局でも海外熱が高まりつつあったのです。
「What's hot in Japan」の特徴とは?
その両方をあわせて、多畑東京支社長と私で考案したのが系列共同制作番組「What's hot in Japan」です。特徴は下記の二つです。
2014年、30分番組「What's hot in Japan」は20局・33本でスタート。その後、参加局も本数もどんどん増え、現在なんと27局132本、ほぼすべての日本テレビ系ローカル局が参加する巨大シリーズに成長しています。「青森・大間のマグロ」「富士山自転車旅」「長崎くんち」など、バラエティあふれるタイトルが集まりました。
海外バイヤーの反応は予想を上回るものでした。「日本全国がわかる素晴らしい番組だ」「100本以上あるから1年は楽に放送できる」「インフライト(機内上映)で毎月流そう」など、あっという間に20カ国以上で放送が決まりました。これまでSTV独自の番組は売れていなかったフィリピン、マレーシアなどでも決定。評判の高さを実感しました。系列各局からは「参加して海外ノウハウが蓄積できた」「海外展開への社内モチベーションが向上した」と好評です。
この「What's hot in Japan」に補助金はほぼ使われていません。総務省補正予算が求める大規模な共同制作ではなく、コツコツとした番組販売であること。字幕付けが不要なアジアへの販売がメインということで、J―LOP(ジャパン・コンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金)にもぴったり該当する予算がないのです。ほとんど各局の手弁当でやっている事業ですが、それでも黒字を達成しています。
本音を言えば、もっと補助金がほしいのです。近いうちに、もっとスケールアップした海外展開をしたい、その際は補助金を存分に使わせていただき、ローカル局の底力を海外へ示したい。
ただ、資金不足でもなんとかしてしまうのがローカル局得意のゲリラ戦法であり、刻みこまれた雑草魂のDNAです。自分の道は自分で開く。一社でパワーが足りなければ団結する。
STVを含む多くの局が、自力で海外展開をするようになるまで、わずか数年。その間の変化といえば、低予算で海外行商に乗り出し、小さな会社ならではのコミュニケーションの良さで社内調整するようになったことが大きいと思います。
また、ノウハウや番組を共有することで、まさに「三本の矢」のような相乗効果がありました。「What's hot in Japan」は一例ですが、ほかにも東北・北海道共同制作の番組や、四国全県が共同で海外と共同制作をするなど、ローカル局同士の団結力は欠かせなくなっています。
ローカル局が今後どう生き残るか、簡単には言い切れませんが、少なくとも海外展開は一つのヒントだと思います。地域に貢献して外貨を稼ぐ。観光客を海外から連れてくる。地元の産品を海外へ売り込む。映像にはそれができる絶大な力があります。
あとは外国人に物怖じしない度胸です。海外番販の世界で会社の大小は関係ない! BBCとSTV、どっちもアルファベット3文字の放送局だ!
そんな怖いもの知らずの精神で、これからもやっていきます。今後は海外人脈や系列の団結力をもとに、より多くの利益を生み出す方向へ進化していきたいと考えています。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら