胃が痛む「MITの競争生活」で学んだこと

市場原理で回るアメリカの大学院

おカネをもらう代償としての競争

アメリカの大学院生が学費と給料を支給されながら勉強できることは、確かに恵まれている。しかし、その代償として厳しい競争がある。

日本では、学生は研究室に「配属」される。だから大学院に入りさえすれば、指導教員が見つからないということはありえない。だが、アメリカでは学生は研究室に「雇用」される。だから、誰にも雇われない、つまり大学院に入っても指導教員が見つからないということが起こりうる。僕のMITでの最初の半年がそうだった。
そのような惨めな学生は、興味のある研究をしている先生に自分からアポを取って会ってもらい、雇ってもらえるように自らを売り込む。いわば「就職活動」をするのだ。僕もこれをやった。正直、胃が痛んだ。その経験は次回に書くことにしよう。

一度雇ってもらっても、結果を出せない学生や怠けている学生は、卒業を待たずに解雇されることもある。

もちろん、学生たちはクビを切られないように必死で努力するから、解雇はそう頻繁に起こることではない。それにアメリカの大学の先生だって冷血動物ではない。

僕の先生も極力学生を守ろうとしてくれる人間味のある人だった。だが、彼にも学生を解雇せざるをえないときがあった。2008年の金融危機の後、それまで3人の学生をスポンサーしてくれていたボーイングが、研究費を2人分に減らしたのだ。僕は幸運にも生き残った。だが、一緒に研究をしていた友人の1人が研究室を去らねばならなかった。

この仕組みは学生だけではなく先生も競争にさらす。まずもって、先生同士の競争に勝たなくては研究費を獲得することができない。研究室の定員は決まっておらず、学科が勝手に学生を配属してくれることもないから、研究費を取れなくては自分の学生を持つこともできない。

また、アメリカの大学の先生は夏休み期間中の3ヵ月は学校からは給料が払われないケースが多い。給料は教育の対価であるから、授業のない夏休み中は無給なのはある意味当然だ。だからその間は、自分が取った研究費から自分自身の給料を出さなくてはいけないことになる。

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