胃が痛む「MITの競争生活」で学んだこと

市場原理で回るアメリカの大学院

競争社会に向いている人とは

アメリカの大学院の仕組みを端的に言えば、学生をつねに競争とプレッシャーにさらし続ける仕組みであると言える。

これを日本の仕組みと比較して優劣を議論するつもりはない。ましてや皆アメリカの大学院に行くべきだなどと言うつもりは毛頭ない。結局は、それぞれの人にとってどちらの仕組みがより合っているかの問題でしかない。

しかし、厳しい競争に勝ち抜き長期間のプレッシャーに耐えねばならないのだから、鉄のような意志と精神力を兼ね備えたスーパーマンのような人こそが、アメリカ式の仕組みに最も合っていると考えるならば、それは少し違う。

アメリカ人の大多数はアメリカの競争社会で生き抜いているわけだが、彼らみんながスーパーマンであるはずはない。平均的には日本人のほうがずっと勤勉で忍耐強い。それに、スーパーマンならばアメリカなんかに修行に行かなくとも成功できるだろう。

そもそも、文字どおり鉄の意志と精神力を持つスーパーマンみたいな人が、はたしてどれだけいるだろうか?

少なくとも僕はそうではない。僕は自分が人並み以上に努力家である自負はあるし、人よりも幾分か大きな夢があるから、相応に強い意志と精神力を持っているつもりではいる。

しかし、そんな偉そうなことを言ってはいるが、中・高や大学1、2年の頃は試験前以外は勉強をしたことがなかった。今でも論文や報告書はいつも締め切りギリギリになって慌てるタイプだ。この東洋経済オンラインの記事だって締め切り日の深夜に必死で書いている。そして口先ではいつも忙しい忙しいと言っている癖に、気分転換だの情報収集だのと言い訳してついついFacebookやらTwitterなどを見て遊んでしまう。

こんなふうに、僕の根っこは怠惰で意思の弱い人間だ。競争に負けることへの不安や締め切りに追われるプレッシャーがなくては、100%の努力を継続できない人間だ。

そして失礼を承知で申し上げるが、あなたも自分の根っこを探ってみれば、多かれ少なかれ、怠惰で意思の弱い面が見つかるのではなかろうか。
責めているのではない。ライオンだって満腹のときに狩りなどしない。怠惰は悪ではない。人間の本性なのだ。

だからこそ、つねに努力せざるをえない環境に自ら身を置き、自分に努力を強制する必要があるのではなかろうか。元来怠惰なホモサピエンスに100%の努力を継続させる仕組みこそが、競争であり、プレッシャーであるのだと、僕は思う。

だから、アメリカの大学院のように競争本位のシステムに本当に合っている人とは、自分の夢や目標を実現するためにもっと努力せねばならぬと思う克己心と、自分の根っこの深くに抱える人間的な弱さとが葛藤し、しばしばもどかしさを感じている、僕やあなたのような人なのではないだろうか。

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