証券と銀行の「個人マネー」囲い込み戦争

「1人1口座」をめぐる攻防

いち早く動く証券会社

「あの野村が……」

昨年末以来、証券業界を驚かせているのが首位の野村証券による「顧客紹介キャンペーン」だ。口座を開設すると、紹介した客と紹介された客に3000円ずつキャッシュバックがある。顧客に新規先を紹介してもらうのは、証券営業のイロハだ。強大なリテールビジネスパワーを有する野村はこれまで、このようなキャンペーンをしてこなかった。それが突然、野村自身が言う「初めての試み」を始めたのだ。これがISA導入を射程に入れた先制パンチであることは明らかだ。

同じ独立系大手の大和証券も「キャンペーン展開をしないわけにはいかない」と言う。「既存顧客には対面営業、オンラインの両面でアプローチできても、新規顧客にはプロモーションが必要だ」。

銀行系の証券会社も戦略を加速しているが、こちらは野村や大和とやや異なる事情がある。メガバンク傘下という立場で、グループ銀行との関係があるからだ。「まずは(銀行の既存顧客の)守りから」(銀行系証券会社)という言葉にもその事情がにじむ。

だからといって、手をこまぬいて見ているわけにはいかない。みずほ証券は「今年1月のみずほインベスターズ証券との合併でリテール力が強化された」と話す。今後、みずほ銀行店舗内にあるブースなどを通じて、銀行からの顧客紹介を拡大させていく。三菱UFJモルガン・スタンレー証券はセミナーなどで顧客へアプローチするほか、既存顧客への残高証明送付などの際にアピールしていくことを検討している。SMBC日興証券は既存顧客を確実に取り込み、家族紹介などの営業活動に出る構えだ。

準大手クラスにも具体的な動きが出ている。東洋証券が2月から開始した「株式入庫キャンペーン」がそれだ。「ISAを意識した」というキャンペーンは、他社の預かり証券の移管にかかる手数料を30万円を上限にキャッシュバックする。口座基盤を拡大し、ISA専用口座の開設につなげていく狙いがある。

デイトレーダーが多いオンライン専業各社は当初、軽減税率の延長を求めており、日本版ISAには否定的だった。が、一転してISA専用システムの構築を急いでいる。

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