為末さん、スポーツ界は息苦しいですか? 「無菌型」の管理が、体罰へつながる

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ビジネスパーソンにとって、論理的な思考はとても大事な能力です。ただ、それだけでは、インパクトのある事業を創造することはできません。
「インパクト志向」については、『インパクト志向』(田中裕輔著)の中で、詳しく説明されている。
いちばん大切なのは、「思考」ではなく「志向」です。「限られた人生の中でどんなインパクトを与えたいか?」――それを考え抜き、世の中のイシュー(重要な問題)を解決することによって、インパクトある事業が生まれるのです。

この連載では、『なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?』『インパクト志向』の著者であり、靴のネット通販を営むロコンドの田中裕輔さんが、 各界で大きなインパクトを与える新世代リーダーと対談します。第3回目は、スポーツという枠を超えて活躍する、元プロ陸上選手の為末大さんです。

 過去の対談はこちら:

(その1):為末さん、スポーツの目的って何ですか?

為末:僕、会う人にいつも聞いてるんですけど、田中さんの会社、ロコンドには元スポーツ選手の社員の方はいらっしゃいますか?

田中:うーん……部活でスポーツをやってたぐらいならいますが、プロはいないですね。プロのバンドマンならいますが。

為末:「スポーツを一生懸命やっていたら、必ず社会で生きていく能力が鍛えられる」と言うなら、本当に生きていけている事例があるのかを知りたくて(笑)。仮に生きる部分があるとすれば、そこを選手は意識しながら現役中を過ごせば、引退後の武器になるだろうし。

田中さんは、スポーツをやっていた人のこの能力はビジネスの武器になると思われるものはありますか?

女子長距離選手のすごいスキル

田中:うーん。そうですね、2つあると思いますが、ひとつ目は為末さんがおっしゃったメンタルの部分ですね。日本の大手商社とかが体育会系の学生を雇いたがるのは、その部分に期待しているからじゃないですか。やっぱり体育会系出身の人間はすごく根性があるので、その素地を磨けば営業でも何でも飛び込んでいけるだろう、みたいな。

でも、プロスポーツ選手じゃなきゃいけないかというと、部活レベルでも十分かなと思います。

2つ目は、特殊スキルの部分ですね。ロコンドの売上の8割以上は靴なんですが、私のマッキンゼー時代の後輩で、プロの登山家がいるんです。彼に登山靴ってどう売ったらいいかをレクチャーしてもらったことがあります。プロならではのスキルや見識はビジネスにも生かせる。

もし私がスポーツジムを運営していたら、プロの特殊なコーチングスキルを活用するとか、いろいろな切り口があるような気がしますね。

為末:なるほど。たとえば女子の長距離選手って、めちゃくちゃ走らなきゃいけないんです。基本的にずっと体がカロリー不足の状態で、食べなきゃいけないんですけど、走っているときに何万回も着地するので、100グラム重くなっただけでもケガのリスクがすごく上がってしまう。

ほかのスポーツは試合までにやせればいいだけなんですが、女子の長距離だけは常にやせていないといけない。だから彼女たちの低カロリーで、かつおいしい食べ物に対する執着ってすさまじいんですよ(笑)。

田中:ほう(笑)。

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